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救われた心
そしてその日はやって来た。
瞳子はチラチラと時計を見上げ、ソワソワしながら仕事をこなす。
定時になると、「それではお先に失礼します!」と即座に席を立った。
まずは電車でお台場を目指す。
会場の近くの化粧室に立ち寄り、いよいよ作戦開始だ。
鏡に映る自分にニヤリとすると、瞳子は意気揚々とミュージアムに向かった。
カツカツと高いヒールのパンプスで入り口を通ると、目の前に広がる空間に早くも瞳子は圧倒される。
(わあ、なんて綺麗なの…)
パノラマに広がる壮大な滝の景色。
ザアーッと響く水しぶきの音。
思わず立ち止まって見とれていると、やがて水のカーテンが左右に開くようにして光の扉が現れた。
そしてゆっくりと扉が開き、次の空間へといざなわれる。
瞳子は期待でワクワクしながら、目を輝かせて歩を進めた。
そこに広がっていたのは、生命の源となる大海原。
ぷくぷくと小さな泡が海底に沈み、一筋の光を生み出す。
キラキラと輝く光は水面を目指し、空を貫き、太陽に吸い込まれた。
そして地上に木々が育ち、海にもたくさんの生命が生まれる。
360度ぐるっと見渡せる大自然の映像に、瞳子は我を忘れて魅入っていた。
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