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子ども達の楽しそうな声が聞こえてきて、ようやく瞳子は隣の部屋へと移動する。
そこには壁一面に海の映像が流れ、子ども達の描いた生き物がふわふわと泳いでいた。
(わあ、可愛い!素敵!なんて夢がいっぱいなの)
タコやカニ、カラフルな魚や見たこともないような生き物。
子ども達が思い思いに描いた絵が、映像の中で命を与えられる。
嬉しそうに自分の描いた生き物を追いかける子ども達に、瞳子も思わず笑顔になった。
その時、「お姉さん、一人?」と、ふいに後ろから声をかけられた。
振り向くと、若い男性が二人、ニヤニヤと笑ってこちらを見ている。
瞳子はサングラスをしっかり押さえながら、
「I'm sorry. I can't speak Japanese」
とそっけなく答えてまた前を向く。
すると諦めたのか、二人が離れていく気配がした。
(これいい!使えるわ。今後もこうやって変装すれば…)
そう思った時、どこからともなく、アリシア!と呼ぶ声が聞こえてきた。
ギクリと瞳子は身を固くする。
自分のことをアリシアと呼ぶこのバリトンボイス…
思い当たる人は一人しかいない。
瞳子は観念して振り返る。
案の定、大河が駆け寄って来るのが見えた。
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