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「わああ、すごい!キレーイ!!」
手のひらの鉱石をつまむ。…すると、鉱石はまるでスライムみたいに柔らかくなり、プルンと指をすり抜けた。
「あ、あ、あれ…?」
ポチャン。パンッ。
すり抜けたスライム…もとい鉱石はそのまま床に落下。
小さな音を立て、王冠のような波紋を作ると、潰れて消えてしまった。
「……」
「………」
「………」
「ま、また上手くいかなかった…」
東雲くんががっくり膝をつく。
「東雲くん……。だ、大丈夫だよ!ちゃんと形になっていたじゃない。いい感じだったよ。次は絶対大丈夫!」
「若葉さん…」
わたしを見上げる東雲くん。その目はもう漆黒に戻っていた。
その深い瞳に見つめられ、胸の奥がキュンと小さく鳴く。
「…そうだよね。ありがとう!よし、もう少し頑張ろう」
「うん!」
そんなふうに励まし合っていると、東雲くんがピクッとなにかに反応した。出入り口に目をやる。
「東雲くん?」
『どうしたの』とわたしが聞くと同時。
パンッと破裂したように響き、教室の扉が開け放たれた。
「あー、やっぱここにいたかー」
入ってきたのは赤茶けた髪のスラッとした男子生徒。
クラスメイトの伊予 知尋くんだ。
体操服を着て、手にはテニスラケットと小さなペットボトルを持っている。
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