微妙な【関係】

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「わああ、すごい!キレーイ!!」 手のひらの鉱石をつまむ。…すると、鉱石はまるでスライムみたいに柔らかくなり、プルンと指をすり抜けた。 「あ、あ、あれ…?」 ポチャン。パンッ。 すり抜けたスライム…もとい鉱石はそのまま床に落下。 小さな音を立て、王冠のような波紋を作ると、潰れて消えてしまった。 「……」 「………」 「………」 「ま、また上手くいかなかった…」 東雲くんががっくり膝をつく。 「東雲くん……。だ、大丈夫だよ!ちゃんと形になっていたじゃない。いい感じだったよ。次は絶対大丈夫!」 「若葉さん…」 わたしを見上げる東雲くん。その目はもう漆黒に戻っていた。 その深い瞳に見つめられ、胸の奥がキュンと小さく鳴く。 「…そうだよね。ありがとう!よし、もう少し頑張ろう」 「うん!」 そんなふうに励まし合っていると、東雲くんがピクッとなにかに反応した。出入り口に目をやる。 「東雲くん?」 『どうしたの』とわたしが聞くと同時。 パンッと破裂したように響き、教室の扉が開け放たれた。 「あー、やっぱここにいたかー」 入ってきたのは赤茶けた髪のスラッとした男子生徒。 クラスメイトの伊予(いよ) 知尋(ちひろ)くんだ。 体操服を着て、手にはテニスラケットと小さなペットボトルを持っている。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!