微妙な【関係】

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微妙な【関係】

転校してから約一ヶ月経った。 最初の一週間くらいは本当に本当に目まぐるしい毎日で 今まで生きてきた14年分の不思議が一気にやってきたみたいだった。 でも最近はそんな不思議にもなれてきて、わたしの生活の一部になっている。 「…いくよ。若葉さん」 「うん」 放課後の空き教室。 わたしの向かいに立つクラスメイト。 黒い髪に目、白い肌の男子生徒。 東雲(しののめ)瑛蓮(エレン)くん。 わたしは東雲くんに両手をさしだす。 ちょうど水をすくうような感じだ。 「………」 東雲くんの目の色が変わった。 比喩ではなく、本当にのだ。 深い漆黒から、輝く金色に。 東雲くんは人差し指で空に魔法陣を描く。 するとそれがポウッと光を纏うように輝き浮かび上がった。 見覚えがある。 わたしが考えた魔法陣だ。これは、たぶん宝石を出す魔術。 東雲くん、そんな魔術を使うつもりなのかな。 胸がドキドキしてきた。 「…の名において命ずる…。…の…を今ここに示せ」 東雲くんの寿命を唱えるコエ。 聞き取れない外国の言葉みたいに、懐かしい子供の頃の子守唄みたいに耳に響く。 「我が手に大地と時の恵みを。ディ・トーン!」 チカっと手のひらで火花が散る。 まるで線香花火のようなバチバチ弾けながら少しずつビー玉くらいの丸い形にまとまっていく。 「わ、あ……」 光の玉から火花が消えてく。そしてまとっていた光もだんだん薄くなり消えていき……わたしの手のひらには一粒の鉱石が残った。
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