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「い、伊予くん。結界破っちゃったの?」
「結界?」
東雲くんの質問に伊予くんは首をかしげる。
この教室は空き教室なのだが、放課後などに東雲くんが魔術の練習によく使っている。
でも万が一誰かにいきなり入って来られると、集中力が切れたりして魔術が失敗する可能性が上がってしまうと思ってるみたいで、東雲くんはいつも軽い結界をはって、人が入って来られなくしているのだ。
ただ、この結界…恐ろしく貧弱みたいだ。
「結界なんかあった?ちょっと建付け悪いなーとかは思ったけど」
「………」
東雲くんは再び膝をつく。
この結界…貧弱なあまり握力30くらいの力で敗れてしまうらしい。
「ああ、…最近は少しは魔術の腕が上がったと思っていたのに」
「あはは、ドンマイ。な、それより瑛蓮。頼みがあるんだけど」
伊予くんはそう言うと、ジャージの裾をまくり膝を見せた。
そこはかなり大きく擦りむけ、血が滲んでいる。
東雲くんが『うっ』と声をあげた。
「い、痛そうだね、伊予くん」
「ちょっとテニス部の練習入れてもらったときにドジッちまってさ。まあ、見た目ほど痛くはないんだけど」
伊予くんはいたずらっ子みたいに笑う。
「これ、魔術で治せね?」
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