エイプリルフール

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エイプリルフール

 小学校6年生のナナミはいつも嘘をついていた。  だって、みんなのうちの私のうちは違い過ぎる。  みんなのうちみたいにお母さんがお洗濯やお料理をしてくれないから、ナナミはいつでも自分でやっていた。  ナナミのうちはいわゆる母子家庭。お母さんは保険の外交というお仕事をしていて、昼間はほとんどうちにいない。  だけど、よそのお母さんみたいに、自分だって、お母さんが何でもやってくれると思いたい。  だから、お友達が 「ナナミちゃんのお洋服、いつも可愛いね。」  と、ほめてくれれば、 「うん。お母さんが日曜日に一緒に買いに行ってくれたんだ。」  と答える。本当は、おばあちゃんが時々送ってくれるお洋服だ。  遠足のお弁当を 「ねえ、すごく美味しそう。」  と褒めてくれた時にも 「うん。お母さんが朝早く起きて作ってくれたの。」  と、答える。本当は自分で朝早く起きて作ったのだ。  今日はエイプリルフール。嘘をついてもいい日だ。  でも、いつも嘘をついているナナミは特にどんな嘘をつけばいいのかも思いつかなかった。  そこで、本当のことを言ってみることにした。 「ナナミちゃんっていつも上履き真っ白だよね。」  新学期で上履きを新しくした子が多かった日にそう言われたので 「いつも自分で洗っているもの。おかあさんは何もしてくれないからね。」 「え?おかあさんが買ってくれたんじゃないの?名前だって綺麗に書いてあるし。」 「もう、足のサイズもあまり変わらないから去年から一度も買ってないよ。破れないように普段から気を付けてはいているんだ。名前も薄くなったから自分で書きなおしたんだよ。」 「やだもう~、エイプリルフールだからって嘘つきすぎ~。」 「本当だよ。いつも言っている方が嘘だったの。」 「騙されないよ~。」  友達は行ってしまった。  ナナミはエイプリルフールは毎年一度本当のことを言う日に決めた。  本当のことを言ったらとてもすっきりしたから。  そして、普段嘘をつき通していると本当のことを言っても可哀そうがられない。
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