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病室の照明を落として、瑠奈はドアの陰に身を潜めていた。
ガシャン
スライドドアの鍵が開く音がして、ドアがガラガラと横に開く。廊下の明かりが部屋に広がると同時に、人影が足を踏み入れた。
廊下の光を目がけて瑠奈は左足の踵を蹴った。
ガウンの襟首をがっと掴まれ背中から羽交締めにされ、骨が軋みそうな強い力に恐怖が疾る。
「だれか! 助けて!」
男は右腕を瑠奈の首の下に廻し、右手で自分の左腕を掴んだ。瑠奈の首に男の太い腕が食い込む。瑠奈は男の右腕を外そうと、両手の爪を男の右腕に突き立てたが、ずるずると部屋の中に引きずり戻された。
「や……やめて……」
声を絞りだす。
「心配いらない。目が覚めたときにはすべて終わっている。辛い記憶も消えている」
神城が液体を含ませたガーゼで瑠奈の口元を覆う。強い臭気が鼻腔を突き全身から力が抜け、両腕がだらりと落ちた。
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