第一話 いちばん好きな季節

21/35
前へ
/193ページ
次へ
 3  午後三時。千綺の希望で、亜佐飛は彼とふたりだけで会うことになった。ふたりは四階のラウンジの屋外テラスで落ち合う。亜佐飛にとって初めて耳にする「ラウンジ」は喫茶サービスつきの社交室や談話室、という意味としてとらえた。 「さっき一階で千綺くんに話しかけてきた男の子って、千綺くんの兄弟?」 「桂夏(けいか)のこと?」  亜佐飛はこくんとうなずく。 「いとこだよ」 「いとこ――」  亜佐飛自身にもいとこはいる。栄尋の妹の子どもと知柚の兄の子どもの、計三人。千綺と桂夏は自分でたとえるとこうか、と亜佐飛は考える。 「僕のお父さんに兄がいるんだけれど、その息子なんだ、桂夏は。ちなみに、僕と桂夏は同い年だから、亜佐飛ちゃんとも同い年ってことになるね」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加