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ふたりは千綺が泊まっているという部屋に向かった。そこに桂夏も一緒に泊まっているという。
「千綺くんたちはお客の立場じゃないのに、ホテルに泊まるんだ」
「もちろん、空き部屋にね。ホテルがどういうものなのか、堂領家の人間は子どもの時からそれを肌で感じなければならないんだ。僕や桂夏が将来的にこのホテルの経営者になるからね」
同い年で将来のことが決まっているとは、自分と住む世界が違う、と亜佐飛は思う。
千綺とともに部屋の中へ入ると、そこに桂夏はいた。亜佐飛の心臓の鼓動はまたいちだんと速くなる。
「亜佐飛ちゃん、夏休みのあいだうちのホテルに泊まることになったから」
「またお前は、勝手なことをして」
桂夏は怒った。亜佐飛は自分が怒られているような気分となる。
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