第一話 いちばん好きな季節

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「俺ら身内がホテルを好き勝手してどうする。もっと他のお客さまの気持ちを考えたらどうなんだ」 「亜佐飛ちゃんの家って、ふつうの家庭なんだって。だから、モニターとして泊まってもらえればいいだろ」 「ごめん、モニターってなに?」  亜佐飛は千綺に聞いた。 「お客さんに無料で泊まってもらうかわりに、ホテルの感想を教えてもらうんだ。それはホテル側にとってもメリットがあるんだよ。経営しているだけだとわからないことに気がつけたりするからね」  創業者が戸祭一家の無料宿泊を受け入れたのは、孫に甘いだけでなく、そういう目的もあったのだろう。 「一般的な家庭の亜佐飛ちゃんたちの意見となると、うちとしても貴重で役に立つんだ。無料で泊まっていると言いづらいだろうけれど、ホテルのここがよくないなって思った時は、正直に言っていいからね」 「うん」
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