第一話 いちばん好きな季節

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 一家が入ろうとした時、ドアマンがドアを開けた。ドアなら小学生の亜佐飛でも開けられるけれど、ホテルの人に開けてもらうことで、いかに自分たちが特別で大切な客であるのかを感じる。高級ホテルは違う、と亜佐飛は子どもながらに感動した。  一家は今日から二泊三日、ファミリー向けの部屋に泊まる。ベッド、ソファ、テーブルと、五人で過ごすのに必要な家具はそろっていた。部屋にあるものはどれも値段が高そうで、そこはまるで高級マンションの一室のようだ。ベッドは三台ある。ここで暮らそうと思えば暮らせるだろう。 「すてきな部屋ね」  知柚はバルコニーから見える景色に感動した。そこからは宝石橋(ほうせきばし)という橋が見える。宝石橋は盤代を代表する観光名所で、全国的にも名の知れた橋だ。「宝石橋、封鎖できません」というセリフが印象的な、宝石橋を舞台とした有名な映画もある。
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