■2.スカウト

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■2.スカウト

「はーい。ここにトランプがありまーす! トランプといっても、激しいことをいう偉い人ではありませーん!」 そのとき、僕は、公園で、ピエロのマジックを見ていた。ここは、僕の本格的な転落が始まった場所だ。 僕は役者で食べていけなくて、無気力になっていた。ほかにアルバイトもやっていたが、ヤケになっていたせいかどれも続かなかった。 ぎりぎりの生活が続いていた。 そんなとき公園でぼんやりしていたら「スカウトの男」がやってきた。いいアルバイトがあるという。公園でぶらぶらしていたほかの無職の男たちが、そのスカウトの男についていって、面接を受けた。機転を利かせないと答えられないような問題がいくつも出て、大半が落とされた。採用された四人の中に僕も残っていた。随分と高い時給をくれるという。 「お金を増やしまーすっていうマジックやったら、警察の人が来たことがあったので、今回は、それはやりませーん!」 おかしいとは思いつつも、男の誘いに乗った。 貸し切りの別荘みたいな所で、採用された者たちと、特訓をさせられた。グループで話し合い、台本を何度も書き直し、電話をかけるロールプレイをし、相手を見極めお金を騙し取る方法を。 「はーい。どなたか、一枚引いていただけませんか? ほら、どれを引いても…… ピエロに呼ばれた見物客の一人が、カードを引くと、全部、ハートのエースばかりだった。 「全部、同じじゃん」 「あらら? 本当だ。同じカードの奴を持ってきちゃった。 …………どれを引いても、同じなら当たり前だと思うでしょう? でも、こうやって、シャッフルして、と。はーい、また、引いてみてー?」 客がカードを引くと、どれを引いても違うカードが出て来た。見物客数人が驚きの声を上げた。
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