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二月。
大学構内のカフェで、真穂は恋人の侑志と昼ご飯を食べていた。
そろそろ食べ終わるかな、というタイミングで真穂は聞いた。
「北原先輩! 春休みのご予定は!?」
ずっと、いつ言おうかとどきどきしていたので、つい声に力が入った。
真穂と侑志は去年の12月から付き合い始めた。同じ大学に通っていて、真穂は大学1年で、侑志は2年。
真穂たちの通う大学は2月上旬から春休みに入る。
恋人になってから初めての長期休暇。
侑志とどこかへ出かけられたら。お花見なんかもいいなあと、一人であれこれ行き先を検索して考えていた。
考えすぎて言うのが遅くなったけれど、まだ大丈夫だろうと思っていた。
「春休みは鉄道で色んなとこ行こうと思ってて」
「そうでしたか。空いてる日ってあります?」
「ごめん。春休み中ずっとだから」
(ずっと??)
浮かれていた気分は一瞬ではじけ飛んだ。
頭の中でいくつか考えていたプランが次々に崩れていく。
「真穂?」
侑志に呼びかけられ、真穂ははっとして我に返る。
気を取り直し明るく「いいですね! 鉄道旅!」と言った。
「楽しんできてくださいね。私もバイトとかしちゃおっかな!」
「おーがんばれ」
侑志の淡々とした声がとどめのように心に突き刺さった。
「じゃあ俺先行くから」
真穂の返事も聞かず侑志はトレーを持って席を立った。
去っていく侑志を見つめながら、じわじわとショックが大きくなっていく。
でも、仕方ない。ああいう人なのだ侑志は。一人が好きで、自由な人。
真穂はそのことをわかっていて、侑志と付き合い始めたのだから。
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