タンポポと夕焼け

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 その日の夜、風呂から上がりYouTubeを観てるとなっちゃんからLINEが来た。 『たけるん起きてる?』 『どした?』  すぐに返すと、衝撃の返事がきた。 『C組の絢瀬紗季って子から告られた』 『保留にしたんだけど』 『たけるんどう思う?』  ポンポンポンと切れ切れに現れるメッセージに一気に血の気が引いた。  今まで返事を保留なんてしたことない。  迷ってるってこと? 付き合ってもいいかなって?  すぐに返事ができない。動悸がして、手のひらにじわぁと汗が噴き出した。  画面を呆然と眺めているとまたメッセージが届く。 『うそだよーん』 「えっ!」  思わず声が出た。  嘘? ウソなの? え? どういうこと?  混乱しつつ、詰めていた息を吐く。  ウソ……なんだ。 『なんだそれ』    意味が分からなくて素っ気なく返すとスタンプがポンときた。照れ笑いしているクマ。頭の上に「ごめんね」の文字。  やりとりはそれで終わった。  ホッとしたのに、その晩は寝苦しくてあまりよく眠れなかった。  なっちゃんは変なヤツじゃない。平気で嘘をついたり、悪意あるドッキリをするようなヤツでもない。本当は、返事を保留にしてあるんじゃないだろうか? ひとりで考えていたけど、ちょっと悩んで相談してきたのかも? でも相談したところで、決めるのは結局自分だしって……だから誤魔化したのかもしれない。 『起きてる?』  なっちゃんにLINEしたけど、既読はつかなかった。当たり前だ。もう深夜二時過ぎてる。  明日、学校に行けば会える。朝、起きたら返事がくるかも。だからもう寝よう。そう切り替えた。でもちっとも眠れなくて、LINEの画面をずっと眺めていた。  
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