タンポポと夕焼け

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 学校から駅へ向かって歩く。俺はもちろんなんだけど、なっちゃんの口数も少ない。昨日のLINEの意味を尋ねる気持ちはとうに失せていた。きっと俺から聞かなくても、絶対聞きたくなくても、なっちゃんがタイミングを見計らって報告してくるんだろう。今、口数が少ないのも、どうやって俺に報告しようって考えてるのかもしれない。  本当は空気を読んで俺から「付き合うことにしたんだ?」って言ってやったほうがいいのかな。でも、なっちゃんの顔を見て話せる気がしない。  祝福なんてできそうにないよ……。  ジワァと目頭が熱くなってくる。  ヤバい。  俺は慌てて、クルリと(きびす)を返した。 「あー……、なっちゃんごめん。先に行ってて」 「え? どしたの?」 「うん、ちょっと。ほんとごめ」  グイと手を引っ張られ思わず振り向く。振り向いた途端、両目から涙がぽろっと零れた。 「たける?」 「う」  振り払った手でバッと顔を覆う。  あーバカバカ! 俺のバカッ! なにやってんだよおっ! 大失態だ。情緒不安定がすぎる。 「……たける。あっち、河川敷の方に行こう?」  なっちゃんが肩を抱き引き寄せる。通学路の横には川が流れていて、河川敷がある。夕暮れには犬の散歩やウォーキングをしている人たちが多い。俺は顔を覆ったまま喚いた。 「な、なんで?」 「そんな泣き顔見ちゃったら帰せないよ」 「はぁ?」  わけがわからない。昨日からなっちゃんの気持ちが全然見えない。 「隠したいのなら隠してていいよ。鼻水出てない? ハンカチ貸そうか?」 「出てないよ!」  俺は喚きながら鼻水をすすった。
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