タンポポと夕焼け

6/8
95人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「ほら、ここ座ろ」  なっちゃんに誘導され、顔を覆ったまま腰を下ろした。  青い草の匂い。指の隙間から見れば、足元には小さなタンポポがいっぱい咲いていた。俺がお尻に敷いちゃったタンポポに自分を重ねる。  消えちゃいたい。まさにそんな気持ち。  肩が触れ合う距離になっちゃんも座った。  膝頭と膝頭がコツンと当たる。 「たける、昨日はどうして眠れなかったの?」 「え? な、な、なんで?」  静かな優しい声なのに、追い詰められたように感じる。 「保健の安藤先生が教えてくれた。考え事していて、気付いたら朝になってたって? 何をそんなに考えてたの? 二時過ぎにも俺にLINEくれたよね?」 「そっ! それは、その……」  なんて答えよう。グルグル考えていると、なっちゃんが言った。 「俺があんなLINE送っちゃったから?」 「そっ! そ、それは、かんけい、ないし」  どんどん声が小さくなっていく。嘘なのはバレバレだ。 「……ねぇ、たける。俺が彼女作るの、そんなに悲しい?」  核心を突く言葉に息を飲んだ。  でもまだ誤魔化せる。「何言ってんだよ。全然だよ」って笑えばいい。  俺はゆっくり両手をおろし、ぼやけた視界の中にいるなっちゃんを見た。 「……ん。すげぇいや」  なっちゃんの目が丸くなる。  ああ、とうとう言っちゃった。ずっと隠していたのに。自分にさえ知らんぷりしてたのに。  なっちゃんの顔がさらにぼやける。  マバタキすると涙がぽたぽた落ちて、なっちゃんが鮮明になった。  優しく微笑んでる。 「やっと言ったな」 「うん。ごめん。俺、おえっ……」  もう友達でもいられない。なっちゃんにバレた。  ギュッと目を瞑ると、なっちゃんが頬をむにゅうと包んだ。   「わかったよ。そんなに嫌なら。彼女は作らない」 「えぁ? なんで? そんなこと」  なっちゃん、どこまで優しいんだよ。 「その代わり、たけるが俺と付き合うんだよ 」 「ふぇ?」  なにを言ってるのか理解できなくてポカンとなっちゃんを見た。 「他のヤツは勘弁だけど、たけるならいいよ。たけるを抱かせてくれる?」  抱く……? 抱くって……せ、っくすのこと……?
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!