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「ほら、ここ座ろ」
なっちゃんに誘導され、顔を覆ったまま腰を下ろした。
青い草の匂い。指の隙間から見れば、足元には小さなタンポポがいっぱい咲いていた。俺がお尻に敷いちゃったタンポポに自分を重ねる。
消えちゃいたい。まさにそんな気持ち。
肩が触れ合う距離になっちゃんも座った。
膝頭と膝頭がコツンと当たる。
「たける、昨日はどうして眠れなかったの?」
「え? な、な、なんで?」
静かな優しい声なのに、追い詰められたように感じる。
「保健の安藤先生が教えてくれた。考え事していて、気付いたら朝になってたって? 何をそんなに考えてたの? 二時過ぎにも俺にLINEくれたよね?」
「そっ! それは、その……」
なんて答えよう。グルグル考えていると、なっちゃんが言った。
「俺があんなLINE送っちゃったから?」
「そっ! そ、それは、かんけい、ないし」
どんどん声が小さくなっていく。嘘なのはバレバレだ。
「……ねぇ、たける。俺が彼女作るの、そんなに悲しい?」
核心を突く言葉に息を飲んだ。
でもまだ誤魔化せる。「何言ってんだよ。全然だよ」って笑えばいい。
俺はゆっくり両手をおろし、ぼやけた視界の中にいるなっちゃんを見た。
「……ん。すげぇいや」
なっちゃんの目が丸くなる。
ああ、とうとう言っちゃった。ずっと隠していたのに。自分にさえ知らんぷりしてたのに。
なっちゃんの顔がさらにぼやける。
マバタキすると涙がぽたぽた落ちて、なっちゃんが鮮明になった。
優しく微笑んでる。
「やっと言ったな」
「うん。ごめん。俺、おえっ……」
もう友達でもいられない。なっちゃんにバレた。
ギュッと目を瞑ると、なっちゃんが頬をむにゅうと包んだ。
「わかったよ。そんなに嫌なら。彼女は作らない」
「えぁ? なんで? そんなこと」
なっちゃん、どこまで優しいんだよ。
「その代わり、たけるが俺と付き合うんだよ 」
「ふぇ?」
なにを言ってるのか理解できなくてポカンとなっちゃんを見た。
「他のヤツは勘弁だけど、たけるならいいよ。たけるを抱かせてくれる?」
抱く……? 抱くって……せ、っくすのこと……?
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