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 キミがずっと行きたかったカフェで、ケーキを食べた。 「んー! 甘い! おいしい!」  はしゃぐキミの笑顔がもっと見たくて、僕のケーキを差し出した。 「一口食べる?」 「いいの?」  遠慮がちなキミのフォークが、僕のケーキを小さく切り取った。 「わ、これもおいしい」  目を見開いたキミの視線は、僕のケーキから離れない。 「もう一口食べなよ。もっと大きくていいよ」  パアッとキミの顔が輝いた。  今度は標準的な一口サイズに切り取って口に運び、幸せそうににこにこと笑うキミ。  待てよ。  ケーキを見下ろし、キミのフォークが切った跡を見つめる。  これってもしかして、間接キ……。  いやいや、フォークは別々のものを使っているし、直接ケーキに口をつけたわけでもないし。 「ねえ、間接キス、なのかな」 「は⁉︎」  キミの爆弾発言に、僕の心臓は30cmくらいは飛び跳ねたと思う。 「ちがうと思うけど!」 「だよね」  慌てて否定すると、キミは大して気にする様子もなく、また幸せそうにケーキを食べ始めた。  動揺しているのは僕だけなのかよ。エイプリルフールだからって、何を言ってもいいと思っているんじゃないか?  僕自身がケーキを食べるようにすすめたことは都合よく忘れて、キミの言動に心の中で文句を言った。 「そういえば」  思い出したように顔を上げたキミは、少し真面目な顔をしていた。 「わたし、もうすぐ死ぬんだよね」  僕は目を瞬かせた。  キミはどうやら、エイプリルフールをまだまだ満喫するつもりのようだった。 「それは、大変だ。病気? 事故?」 「うーん、病気かな」 「早く入院しないと!」 「来週には入院するよ」  キミはにやりと笑った。  ポンポンと続く会話に、僕もなんだかエイプリルフールが楽しくなってきた。 「僕も、もうすぐ死ぬんだよね」 「え」  キミの意表をつけたようだ。心の中でガッツポーズをした。 「病気? 事故?」 「事故!」 「じゃあ、1年くらい家から出るのは禁止」 「そんなの無理だよ!」  僕たちは顔を見合わせて、ぷっと吹き出した。  キミの笑顔を見ながら、教室で今のように声を上げて笑っていたキミの姿を思い出した。  僕はその笑顔を見て、キミに恋をしたんだ。
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