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 世界が赤く染まっている。  僕たちは、駅までの道のりをゆっくりと歩いていた。 「もうすぐ、解散だね」 「うん」  僕たちの乗る電車は反対方向だ。どうせなら、もっと遠いところに出かけて同じ方向の電車に乗って帰れたらよかったかな。 「ねえ、ヒロ」  駅の前で突然立ち止まったキミに、僕も足を止めた。  キミと向かい合う形になり、勝手に心臓が騒ぎ出した。 「好きだよ」  世界が急に息をひそめたようだった。  大勢いるはずの人の足音もカラスの鳴き声も、僕の耳には届かない。キミの発したその4文字が、僕の脳内を埋め尽くした。  僕も好きだ。  そう返事をしてみようか。思い切って。  言わなきゃいけないんだ。二度と会えないのは嫌なんだろ、ヒロ。  しかし臆病な僕の声は、なかなか出てこようとしない。  今日はエイプリルフール。これもキミの嘘だったら。嘘を真に受けた返事をしてしまったら。  言葉を返せない僕に、キミはふふっと笑い声を漏らして微笑んだ。 「今日はありがとう。エイプリルフール楽しかったよ」  ああ、やっぱり。さっきの告白もエイプリルフールの嘘だったんだね。  だけど。 「僕も楽しかったよ。また会えるかな?」  再会を願う。それくらいの勇気は僕にだって出せる。  キミは嬉しそうに笑った。  その笑顔で、十分だった。  改札をくぐり、ホームに上がる。僕たちの乗る電車は、同じホームの両側に来る。キミが電車に乗り込むその瞬間まで、一緒にいられる。 「それじゃ、またね」  電車がホームに滑り込む音が、僕とキミの会話の邪魔をする。  電車のドアが開く。  キミは名残惜しそうにこちらを振り返った。 「またね!」  閉まった電車のドア越しに、手をブンブンと振りながら、どこか泣きそうなキミの顔が見えた。
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