コーヒー1杯の深呼吸

春のはじまり

午後一番の打合わせを終え、ホワイトボードへ向かう。
ホワイトボードに「中目黒、直帰」と書き、ペンを置く。

「芝山くん、今日はこのまま中目黒で打合せして、そのまま直帰するね。これからプロジェクトが始まるし、当分は頻繁に中目黒打合せかな。」

「了解です。いってらっしゃいませ。」

芝山くんは朝と同じ子犬のような笑顔をこちらに向ける。

「いってきます。じゃあ、お疲れ様。」

彼に踵を返し、オフィスを後にした。

中目黒駅で下車する。
中目黒はおしゃれで都会的な中に、どこか懐古的な雰囲気のある不思議な街だ。代官山や恵比寿とはまた違う、落ち着ける魅力があるように思う。

中目黒と代官山の途中にある事務所で打合わせを終える。初回の打合せだったこともあり、意外にもあっさり終え、夕暮れ時の空はまだ明るい。

ーーー久しぶりに目黒川周辺でも歩いてみるか。

事務所から中目黒方面へ向かい、目黒川周辺の街並みを適当に散策する。
以前来た時と変化のある店舗や風景に、長く中目黒に来ていなかったことを実感する。

赤く染まっていた空が、薄暗い灰色に変化し、空気も冷え込んでくる。

そこで目についたのが、あの「cafe」のシンプルな看板だった。