Hyg Dig

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コーヒーを飲み終え、紙カップを捨てようとしたが、名前が書かれているのを捨てるのは後ろめたい気持ちになり、バッグの中に忍ばせる。 店の外にでると、彼は立ち上がり「コーヒーどうでした?」と声を掛けられる。 「美味しかったです。目の前でコーヒーを淹れてもらって、ゆっくり飲ませてもらって。なんだか贅沢な気分。」 「嬉しいです。是非また来てくださいね。あ、そうだ。良かったらこれ。」 彼はエプロンのポケットからグレー色のカードを取り出す。差し出され、受け取ると『Cafe 'Hyg Dig'』と書かれたショップカードだった。 「あとこれも、どうぞ。」 彼が手を差し出すので、掌をだすと、一口サイズのチョコが置かれた。 「ありがとうございます。」私がカードとチョコを受け取ると彼は軽く会釈し店内に戻る。私も会釈し返し、店を去った。 中目黒駅を目指し、目黒川沿いを歩く。 辺りはすっかり暗くなり、木々の間から空に浮かぶ星が見え隠れする。 街灯に照らされた桜の枝先に小さな桜の芽がついているのが目に入る。 ここに来るまで、今日は1日陰鬱としていた。 鬱々と沈んでいた心が1杯のコーヒーに掬い上げられた気がした。
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