咲と旭

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咲と旭

初めてカフェを訪れてから、2週間。私は中目黒での打合の日にはカフェを訪れ、バリスタの彼が淹れるコーヒーに癒された。 週末明けの月曜日、今日は午後からの打ち合わせ前に立ち寄った。 「週末は来てくれなかったですね。」 コーヒー豆を挽きながら、『寂しかった』って表情を彼が作る。 「中目黒に来る用事もなかったし。」 「佳乃さん週末も来てくれるかなぁなんて、ちょっと期待して待っちゃってましたよ。」 歯の浮くようなセリフを言いながらコーヒー豆をドリッパーに移している。自然体な彼が言うとそんなセリフも厭らしさを感じないのが不思議だ。 2度目にカフェを訪れた時、彼は『待ってました!』と言わんばかりの満面の笑顔で迎えてくれた。たかだか2回目の来店にそこまで喜んでくれるのかと驚いたが、彼はその後も毎回その笑顔で迎えてくれる。 その無垢な笑顔は、来店を受け入れてもらっているようで素直に嬉しかった。 それに彼は何かと話しかけてくる。彼がコーヒーを淹れる間『いい天気ですね。』とか『今日のおすすめの豆は』とコーヒーの説明から始まり、『好きな食べ物は?』とか、『仕事は忙しいか?』とか。取り止めもない質問をされる。最初はその距離感の近さに戸惑ったが、徐々に彼との会話も楽しみの1つになった。 「週末はいつも何して過ごしてるんですか?」 「うーん。掃除とか、買い物とか、サブスクで映画みたりとか?かな。」 視線はドリッパーを見詰めたまま「なるほどねえ。」と頷きながら呟やいている。 毎回こんな感じで、ある程度会話をするとあっさりと引いてくれる。その会話の加減がちょうどよく、彼のコミュニケーション能力の巧みさに羨ましくなるくらいだ。 「よっ。」 入り口の扉が開く音がし、彼が視線をそちらに移す。
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