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 こんなにドキドキするのは一体いつぶりだろう。  土曜日の昼過ぎ、私と麦谷くんは燦々と日光の降り注ぐ屋上の日向で肩を寄せ合っていた。夏休みが終わり、地球が一気に秋を深めてきたので私たちの制服は長袖になっている。 「じゃあ開くぞ、桐葉」  私は麦谷くんのスマホの画面をじっと見つめた。  そこには『二次選考結果発表』と書かれたリンク名が表示されている。  一緒に結果発表を見てほしい、と彼が私に言ってきたのは昨日の放課後だった。  六月に一次選考を突破したコンテスト。これが本命で、最後のひとつだ。  そんな大切な発表を私も一緒に見ていいのかな。  そうも考えたが、彼がそうしてほしいと言うなら断る理由はなかった。 「いいよ、麦谷くん」  私の言葉に頷いて、彼はサイト名をタップした。  少しの読み込み時間があってページが開く。私たちはさらに画面に顔を近づけた。  上部に大きく『二次選考通過作品』と書かれたページには、ずらりとアーティスト名と作品名が並んでいる。  ゆっくりと彼の人差し指が画面をスクロールしていく。私は次々と現れる文字を一行ずつ目で追っていく。  その指が、途中で止まった。 「……あった」  麦谷くんの声が聞こえる前に、私は彼の肩に縋りついていた。  息を吐いて、今まで息を止めていたことに気付く。吐息と一緒に声も漏れた。 「……ああ、やった。やったね」 「まだ最終選考あるけどな」  冷静に話しているフリをしながら、彼の声には隠し切れない喜びが滲んでいた。  このコンテストの最終選考作品は必ず音楽プロデューサーの耳に入る。麦谷くんはそう言っていた。  受賞作品は楽曲化されて、作曲者はほぼ確実に音楽業界に身を投じることになるし、たとえ受賞を逃しても気に入られれば直接声がかかることも多いとのことだ。  また最終選考作品はサイト上に作曲者名とともに掲載される。  私にはよくわからないが、それだけでも十分な名誉であり、力のある作曲者であると証明されるという。  このコンテストはメジャーリーグだから、ということらしい。  
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