最終話、華守人に戻る時

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「今日は、晴明の番だっけ?」 「正確にはまだボク」 「ごめん、オロ。寝てた」 「ん。いーよ。でさ、朝陽ぃ」  異界で本来の力を取り戻してからは、体も大きいままなのだが、小さな姿だった名残りからかオロが甘えたな声音で言った。 「今日皆んなでシテもいい?」 「はい?」 「だからさ、皆んなで朝陽マワしたいの」 「その言い方はやめろ!」  声を大にしてツッコんだ。 「言い方は気をつける。て事は内容自体は良いって事だよね。ありがとう朝陽。でね、さっき朝陽が寝てる間に念の為にお腹の子に重ねて結界張ったからなのか、朝陽からいつもの愛液出ないみたいなんだよね。だから前にキュウが買った液体使っていいよね?」  オロが言うと卑猥な事も卑猥に聞こえないのが災いした。逃げるタイミングを失ったのである。「液体?」と朝陽が思考を巡らせている内に、ベッドに乗り上がってきたニギハヤヒと将門に押し倒されてしまい、腕をそれぞれ固定された。マウントポジションにはオロがいる。 「キュウが買ったやつって……」 「これこれ~」  やたら嬉しそうにしながら、キュウがローションを誇らし気に掲げた。 「おい、それってまさか……」 「媚薬入りローションてやつだよ。せっかく買ったんだから使わなきゃ勿体ないでしょ?」  キュウの瞳が輝いていた。 「ああ、それと。朝陽に触れる時に微弱な霊力を流してあげると凄く良い反応をしてくれるよ」 「晴明! いらん事は教えんでいい!」 「という訳だ。諦めろ朝陽」  見惚れそうな程に楽しそうに目を細めた将門が、片方の口角だけ持ち上げて笑んだ。 「前から思ってたけどさーあ? 朝陽って将門に見つめられるの弱いよね? エコ贔屓はんたーい」 「俺の目の色がお気に入りらしいからな」  得意げに言った将門に、違うと言えないのが悔しい。髪を切った時、確かに似たようなセリフを言ったのを思い出した。朝陽は諦めの気持ちの方が勝り、体を弛緩させた。 「そうそう、朝陽。気がついてたか? お前、神造人から華守人へと戻っておるぞ」  ニギハヤヒに言われ、遠い目をしていた朝陽は目を見開いた。 「え? そうなのか?」 「やはり気が付いておらんかったか。それでな、今は儂らの契約も全てリセットされている状態なんじゃ」 「は? 何で⁉︎」 「詳しい事は、また今度。完全に華守人に戻った今日中に契約のやり直しをしたいと思っておる。お前は儂らと再度番になる事に異存はないか?」 「まあ、お前らと番うのは良いけど……」 「なら決まりだな」 「いや、待て。端折ったとこも話せ! そこも重要な気がするぞ。適当過ぎだろっ‼︎」 「シシ、儂がこうなのは生まれつきだ。そろそろ慣れる。安心しろ」  物凄く良い顔で言われた。もう慣れ始めている己が怖い。  そこでハタと気がついた。  契約のやり直しとなると、発情期が必要な訳で……。  でも行為を潤滑にする分泌液が出ないとなると、うっそりと笑みを浮かべているキュウが持っている媚薬入りローションが必要な訳で……。  そして、ベッドの周りでは微弱な霊力放出を試している楽しそうな番達がいて……。  ——俺、死んだ。  朝陽に再び快楽責めフラグが立った瞬間だった。
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