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 もともとは舞台人だった、というのも、あながち嘘でもないのかもしれない。 「娘を、迎えにきました」  レーヌもレーヌで、相手の強い視線に怖気づくこともなく、まっすぐに見返して答える。 「私も、最初はこういう小さな劇場から始めました。だから、実情は知っているつもりです。これ以上、娘を預けるつもりはありません。わかっていただけますか」 「あんた……」  ガーティは驚いたようだ。  それは、そうだろう。  今を時めく有名女優が、自分たちとおなじ場所からの成りあがり者だと、自らはっきりと口にしたのだ。  そしてガーティが、レーヌの堂々とした態度に、なんとなく臆したところで、場が膠着した。  母親の気迫に対して、ゾーイー・クロエはといえば、まだ戸惑いと不信から抜け出せずにいる。  そんなふたりを、このまま無理やり連れだしていいものか、モリスもレイモンドも迷ってしまう。  そこに、ちょうど駆けつけた人間がいた。  ハノラ・オコーナー院長だった。  こちらは、パティが呼びに行ってくれたようだ。  ゾーイー・クロエはその姿を見たとたん、レーヌの腕を抜け出し、院長へと駆け寄る。  その瞬間。  数知れぬ観客を魅了してやまない女優の顔が、痛みに歪んだ。  たったひとりの、ちいさな少女の愛情を得られない、その痛みに。
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