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最善の策のはずじゃないか?
俺達三人がいつまでも一緒でいるための策。
じゃあどうして君はこんな置き手紙を残した?
さよならと言う物騒な4文字を書いた?
水の方がちょっと愛してたよ
俺、間違えてた?
纏まりのつかないままスマホを取り出し電話をかける。
コール音が何回も繰り返しなり続ける。
耳に残るほどしつこく鳴り続けるコール音が止むのを心の底から願う。
バクバクと今にも破裂しそうな心臓の音とコール音が重なり合い、そしてーーー
「ただいま電話に出る事ができません」
機械的な女性の声が俺にそう告げた。
君が電話に出る気はないと笑われた気がした。
呆然とする。こんなに秒針の音はやかましかっただろか?こんなに部屋は広かっただろうか?
こんなにここは寂しかっただろうか?
「あれ?帰ってたのか」
背後からいつもと変わらない調子の声が俺の肩を叩く。
それが逆に怖かった。
飄々とした声に振り向く事ができない。
「残業疲れたべ?ご苦労さん」
段々と近づく声。
「俺はちと散歩してきたよ。ついでにコンビニでバームクーヘン買ってきたけど食うか?」
そしてその声は真後ろにきた。
つむじにかかる聞き慣れた声。聞き慣れているはずなのに違和感しかない。
何も答えない俺に飄々とした声は言う。
「奈帆ならもう帰ってこないぞ」
俺が一番恐れていた言葉をこいつは軽口で吐いた。
流れる血液が冷えていく。指先が痺れて痛い。
「結末は最初からわかってたでしょ?まさか上手くいくって本気で思ってたのか?」
は?
俺を嘲り笑う発言が脳みそを思いっきり殴る。
ガラガラと騒がしい音を立てて今まで積み重ねてきた様々なものが崩れ落ちていく。
一番好きな映画のジャンルはどんでん返し系。
驚愕のラスト、あなたはきっと騙される、と言った文言で宣伝している映画は必ず観てしまう。
今の状況はまさにそれだった。
どんなどんでん返し系の映画よりも驚愕させられた。
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