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転校生、女の子だったらいいな。
「篠田 奈帆です。よろしくお願いします」
体育館に集められた全校生徒の前で堂々と自己紹介をする女の子。目がクリクリでリスみたい。
背が低くて整列順が一番前の俺は、転校生である女の子の顔がよく見えた。
壇上に立つ彼女を体育座りをしながら見上げる。
体育館の冷たい床と硬さを忘れるくらい見惚れた。
女の子がいいなと言う俺の願いは叶った。
お釣りが来るくらいサービスされて叶った。
こんな可愛い女の子、生まれてはじめて見た。
「かぁわいい」
後ろに並ぶ田中君がうっとりした声色で呟く。
あまり話した事がないけど、思わず賛同して頷いた。
まさか俺が頷くなんて思いもしなかったのだろう。
なんだか少し嬉しそうな声を出して「だよなだよな?」と田中君は絡んできた。
友達と言える存在がシロくらいしかいなかった俺は、クラスメイトが話しかけてくれた事がちょっとだけ嬉しかった。
耳は後ろへ、目は前へ。
今日に体を使いこなしている俺を、壇上の転校生は見た。
パチリとぶつかるお互いの視線。
目がクリクリしていてリスみたい。
分散していた神経が転校生へ集中したせいで、田中君が何を話しているのかわからなかった。
何か俺に話しかけている。それしかわからなかった。
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