桜舞う午後

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 そう、ちょうど今日みたいに母がお節介で的外れなことをした時など、香乃の苛立ちは一瞬の内に沸点を越える。  モノは違えど同じように料理を作って売る商売をしている星野夫妻のケーキ屋に、いくらおすそ分けとはいえ店で余った品を持ってくるなんてどうかしてる。偉そうだし世間知らずだ。  そもそもアタシがあのお店でバイトの口を見つけたのは親とは何の関係もないルートだったのに。元々友達のノンちゃんがあそこで働いていて、アキナの店の真ん前だからそれをずっと美ましがっていて、そうしたらバイトに空きが出たからってノンちゃんが誘ってくれたんだ。独自ルートだ。  それなのにアタシが、かの有名な、フレンチレストランのオーナーの娘だということが知れてしまって、星野夫妻が挨拶がてら食事に行っちゃって、星野夫妻もフランス好きだから意気投合しちゃって、結局仲良くなってしまった。  そんなことばかりだ、と香乃は強く思う。何だかアタシの人生をしょっちゅう親に土足で横切られているような感覚。そしてその対象はなぜだか父ではなく母であるという感覚。生々しい野蛮な怒りばかりで、だからどうしても客観的になれない。
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