24.かけがえのない存在

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「フッ。ようやく言ったか」 「え・・・?」 「その言葉。ずっとお前から聞きたかった」 「杉崎・・・」 「違うだろ」 「え?」 「名前。ちゃんと呼べって言ったろ」 「あっ・・・。かい・・と・・・」 「もっかい」 「えっ!?」 「ちゃんと呼んで」 「櫂斗・・・」 「うん」 「櫂斗・・・。好き・・・。あたしも誰より櫂斗が好き」 「うん」 あたしが絞りだした声で伝えたその言葉に、今までで一番優しい微笑みであたしを見つめる櫂斗。 「これでようやくもうお前オレのもんだからな」 「それって・・・付き合うってこと・・だよね?」 「は?それ以外何があんだよ。何、嫌なの?」 「嫌じゃない!付き合う・・・!」 あたしは泣きながらその言葉を受け入れる。 「フッ。何泣いてんだよ」 「だって・・・嬉しくて。こんなの絶対ありえないって思ってたから」 驚きで信じられないと思いながらも、目の前であまりにも優しく見つめてくれるから。 少しずつ、その伝えてくれた言葉が本当なのだと実感して、自然に涙が零れていた。 「なんで?オレにとっちゃお前好きにならない人生のがありえねぇけど」 「それこそありえないじゃん・・・」 「てか、オレお前にずっとさりげなく伝えてきてたつもりなんだけど」 「だって、そんなの全部あたしの勘違いかなって思うじゃん・・・」 「えっ、マジでお前ずっとそうやって思ってたの?」 「うん・・・。てか、そっちもわかりにくすぎるんだよ」 「てか、お前が深く考えすぎてただけだろ。オレはお前にだけは、いつもホントに思ったことしか全部伝えてない」 「全部・・・?」 「そう。全部お前だからどんな些細なことでも気になったし、お前だからオレはこんなにも好きになった」 「あたしだってそうだよ・・・」 「お前と一緒にいることが自然で当たり前のように、いつの間にかオレはお前を自然に好きになってた」 「あたしも・・・」 「フッ。お前そればっかじゃんかよ(笑)」 「だって、あたしの伝えたいことや想ってること、全部櫂斗が伝えてくれるから・・・。ホントにあたしも同じなんだもん」 「じゃあ、もし・・・オレがこうやってお前に伝えてなかったらどうしてた・・・?」 「気持ち・・伝えないつもりでいた・・・」 「は・・・? ずっと好きだったのに?」 「ずっと好きだったからだよ」 「なんで?」 「ずっと・・ホントに好きだったから、あたしは、どんな形でも、ずっと櫂斗の側にいられるなら幸せだったから・・・」 「お前さぁ。もっとオレに愛されてる自覚持ってくれる?」 「愛・・!? えっ!?」 「まぁそういう自覚ないとこも愛しくて可愛いけどな」 「えっ、いや・・・!」 ちょっと急に甘くなってきてどうしていいかわからなくなる。 「何?」 「いや、急にそんな甘くされたら戸惑うというか困るというか・・・」 「は?オレが全力でいったらこんなんで済まねぇぞ」 「えっ!?」 「まぁこれから慣らしていくか」 「何を?」 「ん?オレのお前へのでけー愛。全然お前に伝わってなくて、わかりにくかったみたいだし?」 「だって・・・!」 「だから、こっからちゃんとしっかり受け止めろよ。嫌ってほどお前好きだって伝えてやるから」 そう言ってまた優しく笑って、今度は甘く優しいキスを落としてくれる。 それは、今までになかった初めての愛しさを感じられるキス。 唇からあたしを愛しく想ってくれるような、あたしを求めてくれるようなそんな幸せなキス。 こんなにも幸せなキスがあるななんて知らなかった。 世界で一番好きな人とのキスは、想いが通じ合ったキスは、こんなに甘くて優しくて切なくて愛しい。 ずっとずっと願っていた愛する人と想いが通じ合ったこの瞬間、あたしは今までの人生で一番幸せを実感出来た瞬間で、そしてこの一番幸せな瞬間を絶対一生忘れない。 「どう?オレのでけー愛?受け止められそう?」 「フッ。あんたの愛そんなもん?あたしのあんたへの愛に比べたら全然たいしたことないから」 「ハハッ。マジか(笑) なら、それこれからじっくりお前のデカい愛伝えてもらわねぇと」 「覚悟してなさいよ。これからもっとあたし好きにさせてやるから」 「上等。お前こそ覚悟しとけよ。こっからお前誰より幸せにしてやるから」 「うん。覚悟してる」
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