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「ほら、コーヒー」
「ありがとうございます」
家につき
ソファーに座っていると
私のマグカップを手渡してくれた。
もくもくと
あがるコーヒーの湯気。
ふーふーと息をかけて
コーヒーを飲めば口いっぱいに広がる独特の苦味。
奏さんに
全部話そうって
そう思っていたはずなのに
いざ
話そうとすると
どう切り出せばいいのか
どう話したらいいのか分からずに話せずにいた。
「なんで俺がひかりの父親がバスの運転手してるって知ってると思う?」
優しい奏さんは
私が話しづらいことに
気づき自分からそう話題を振ってくれた。
「……わかりません。」
両親は私が中学に
入学すると同時に離婚して
母に引き取られた私は苗字が
変わっているから名前で気付いた可能性は低い。
「貸し切り先で、よく会うんだ。会社違うのによく話しかけてくれたり、道を教えてくれたこともある。……で、たまに自分と別れた奥さんとの間にひかりって子供がいるって会話で、もしかしてと思って、聞いたらまさかの大当たり」
「……あの、怒ってないんですか?」
「なんで?」
「父のこと、黙ってた私のこと。」
私は父のことを
故意に奏さんに話さなかった。
父が同業者で
それに加えて
ライバル社だなんて言ったら
奏さんが離れていきそうで怖かったから……
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