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目を閉じて
彼を待っていたけれど
一向に彼の唇と
私の唇が触れることはなく
違和感を覚えて
ゆっくりと目をあければ
今にもお互いの
唇が触れ合いそうなくらいの
近い距離にいる真顔の奏さんと視線が絡んだ。
「たまには、ひかりからして」
「えっ?」
「いつも俺からで、ひかりからキスされたことないだろ?だから、ほら」
「きゃっ」
私の腕を
強引に引っ張り
自分の膝の上に座らせた奏さん。
いつもは
見上げて見ている奏さんが
いつもと違って
私より低い位置にいて
彼はそっと目を閉じて静かに私のことを待つ。
「い、いきますよ……」
「クスッ、いつでもどうぞ」
切れ長の目元に
スッと伸びた鼻筋に
女性の私が羨むくらいに透き通った肌。
なんだう……
いつもはクールで
完全無欠で隙のない彼が
無防備に私の前でされるがままの
姿を見ているとなんだか胸の奥がキュンとして
恥ずかしさよりも勝る
彼に触れたい、彼の熱をもっと近くで感じたいって欲。
気づいた時には
色々我慢出来なくなっていて
自分の唇を彼の唇にそっと重ねていた。
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