独身証明書 前編

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独身証明書 前編

札幌市内の某ホテルで結婚お見合いパーティというのが開かれるということだったので 会社の同僚と出席する約束をして 普段は着ないスーツを着て出かけて行ったのだけれど、 ホテルの受付で身分証明書の提出を求められて免許証を見せると、 年齢制限が20歳~38歳までだったので 入場を断られてしまった経験があった。 それで家に戻ってネットで調べたらその年齢を多少過ぎていても 「独身証明書」ってのがあればいいらしいってことが分かったのですが どうやら役所に行けば 「独身証明書」ってのを 発行してもらえるらしいのですが そんなものが存在してることすら 僕は知らなかった。 離婚経験のあるガールフレンドに電話してその話をしてみたら、 「独身証明書?聞いたことないわ」 「何か、役所に行けば発行してもらえるみたいなんだけど・・・・」 「それで、独身証明書って何に使うの?」 結婚お見合い・・・というのが 何となく恥ずかしくて、 「ホテルで合コンがあるので」 と言ってしまった。 「合コン?その歳で?」 「僕の若かった時は、合コンなんてなかったから一度ぐらいは行ってみるのも いい経験になるかなと思ってさ」 「おもしろそうね!」 「私も行ってもいいかしら?」 「何でお前と 一緒に行かなきゃならいんだよ!」 「私ね、男を見る目はないけど、 女を見る目はあるわよ!」 「一目見ればだいたい どんな女なのか分かるわよ」 と言う訳で、千里眼のような鋭い観察力のある昔は同じ会社の同僚だったガールフレンドと2人で行こうという話になってしまったのです。 それで、出席できそうな札幌のホテルで開かれてるのを探してみると やっぱり年齢制限が 39歳までってのが多かった。 ようやく探し当てたのが「中高年の出会い(第二の人生を楽しく過ごす)」 年齢30から59歳までが対象となってた。 問題なのは、第二の人生というそのタイトルを見ただけで 気持ちが落ち込んだ。 自分はすでに第二の人生の対象者になってることにショックを隠せなかったからだった。 ホテルの受付でプロフィールカードと言うのを渡されて、彼女と二人で書いた。 「大事なのはインスピレーションよ、 最初に見た時にピーンとくるかどうかにかかってるのよ」 と彼女は僕にそう言った。 でも会場にはいるとバイキング形式のディナーが美味しそうだったので そっちの方に目が行ってしまったのです。 司会の中年女性が、 「皆様、人は外見や見た目 ではありません。 あくまでも人柄が大事です!」 とアナウンスしていたのだが、 やっぱりいくら人柄が良くても太った女性は嫌だなと思ってしまった。 ディナーを食べ始めてしばらくすると、 これから5分後にアピールタイムってのが始まるらしい。 各じ、お目当ての人に近づいて 自己ピーアールしてもいい ということだったのだけど、 女性が男性に警戒心をいだくように、 僕だって、 女性には警戒してしまって気後れする。 それにしても、 見渡すと中学か高校の父兄参観日に 同席してるような心境なのだ。 そしてついにアピールタイムは始まってしまったのだった。 横に座っていたガールフレンドは いずこかへ立ち去り、 僕の座っている横の席は空いていた。 しばらくすると、 しっかり僕の横に一人の女性が現れた。 「今晩は~はじめまして、ひょつとして○○さんじゃないかしら?」 「あ、はいそうですが、僕のプロフィールカードをご覧になられたのですか?」 「いいえ、たぶん私の勘違いじゃなければ中学の時の同級生よ、3年B組よね?」 「僕は少しだけ考えた、名前が違っていたら失礼だと思ったからだ。ひょつとして、 ま、まどかちゃん?」 「嬉しい~覚えてくれてたんですね」 「え、、何年ぶりだろう・・・」 「そんな、お互いに歳のことは言わないの!、あなたと同じよ!」 そしてしばらく話会った後に、携帯の赤外線送受信を利用して アドレスと連絡先を交換したのだが、 その場面をしっかり見られていたせいか他の女性は寄ってくる気配はなかった。 かといって綺麗な女性の横には男性がしっかりと付き添っていたので、 後は自分から話をしてみたい女性なんていなかったのだった。 しばらくすると、ガールフレンドが戻ってきて僕の横に座った。 どうだったか尋ねると「う~ん、いまいちかな・・・」 「あなたは?」「同級生にあったよ。」いいじゃないそれ、 それこそ、「縁」なんじゃない。 「縁と言われてもね、所詮は同級生だしね、 同窓会じゃないわけだし、今はまだ結婚したいわけじゃないしね。」 「じゃぁ何しに来たの?」 「社会見学です、あくまでもね」 「そっか、初めからやる気なしだったんだ」 それから会場で二人で別々に食事を済ませた。 家に帰って風呂に入って出てきてみると 携帯に着信メールがあった。同級生の「まどかちゃん」からだった。 まどかちゃんとは中学時代からの同級生で 教室でも席が隣だったこともある。 二人の共通点といえば誕生日が一日違いだったという事ぐらいで、 特に学生時代は二人の仲がよかったというわけでもなかったのだが、 丸顔で可愛い顔だった。 大人になったのか顔立ちが長くなり眼も少し吊り上がったように見えた。 メールの内容は今度一緒に何処か行きませんか? というような内容で、ひょつとしたら 自分に気があるのかもしれないと思ったが。 すぐに返事は送らずに。 タバコを一本吸ってから眠りについた。 夢の中で見知らぬ女性と性行為をする夢を見たのだが 顔は覚えていないことが多い。 今年の7月に禁煙外来に通ってタバコを辞めることができたのだが、 禁煙するために朝晩服用する薬の副作用に悩まされた。人によってはチャンピックスという薬の副作用で気分が悪くなるようだが、最初は薬の副作用なのか、 いい夢をたくさん見ることができた。 出会って2日目に結婚するという 常識では考えられないような夢まで見てしまったのだ。 結婚したくない理由のひとつに自信がないといのがある。 今まで一人で生きてきたけど。今までの出会いでどうしても この女性と一緒になりたい。とは一度も思ったことがない… 結婚できない私にはそれなりに普通とは違う思考パターンがあった。 それは、世界で一番愛してやまないのは自分本人であって、 けして相手の女性ではない。ようするに私は自己愛を己の心情としてこれまで生きてきたのだから、いきなり女の為に生きろといわれても気持ちが進まないのである。 それよりも今の職場を退職して小説家になりたいとういう夢もあった。 でも、小説家の収入は普通のサラリーマンの三分の一で作家として活躍できる場は昔からみたら三分の一で、苦労して作家になったとしても生き残れるのはわずか 5%ぐらいで、ほとんどの人が途中で何らかの事情で書き続ける事が 困難になる仕事です。 ですからこれから 結婚を考えている男性にとっては、 避けたい職業ですし、 婚活の場で「小説を書いてます」というとその時点で結婚対象外の人と思われます。 それでも構わないという 貧乏が苦にならない人は、 あくまでも趣味だと思った方が 長く続けられるかもしれません。
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