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開花宣言
四月某日。
「1,2,…………5,6。はい。開花確認しました。」
気象庁の観測員より、標本木の開花を確認。
「開花宣言」と相成った。
各メディアは、こぞって「桜の開花」を取り上げ、連日ニュースは桜の映像で華やかさ一色だ。桜の名所には、遠方から遥々観光に来るもの、地元でしっぽりやるものそれぞれに桜を愉しむ。
まるで運動会の「よーいどんっ。」と一緒だ。
スタートラインで号令が出るのを、今か今かと心待ちにしていた様に一斉に走り出す。
なんと言っても桜の寿命は短いのだ。
まだ数輪の花びらが咲いただけだが、開花宣言が成されれば堂々と皆花見が出来るってものだ。
満開には、ほど遠いがあちらこちらで花見客が桜の名所に押し寄せる。
桜の成長もまた早いのだ。
「今週末には、満開だな。」
「今年も楽しみだ。」
「佐藤さん家のばあさんがこの前大量の餅米買ってたそうだよ。」
「ははっ。桜餅か。あそこの桜餅は絶品だからな。後で声掛けに顔出してみるか。」
「そうだな。俺も小林さんとこと、加藤さんとこにも一声掛けてくるさ。」
白浜公園を通りすがる人たちは満開を予想する。
どうやら、今週末近隣が集まり小規模な花見大会が開催されるようだ。
ここ数日で、見違える程の蕾が開花していた。
父:「だいぶ、起きてきたな。」
母:「まだまだ寝ぼけてる子が多いみたい。風に飛ばされないか心配だわ。」
子供:「ねぇ、ねぇ。」
父:「どうした?」
子供:「今年もお祝いに来てくれるかなー?」
父:「ああ、もちろんだとも。きっと来てくれるさ。」
母:「ちゃんと良い子にしてれば、来てくれるわよ。だから、みんな起きるまでは散らないようにね。」
子供たち:「「うんっ。」」
子供:「でも何でいつも、僕たちが起きるとお祝いに来てくれるんだろう。」
父:「そりゃあ。めでたいからに決まっているだろうさ。」
母:「あの人たちも、アナタ達の成長を楽しみにしてくれているのよ。」
子供たち:「ほぇ〜。」
お花見、それは開花したばかりの蕾からしたらお誕生日会の様なものだ。
人も桜も、きっとその日を心待ちにしている。
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