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◇
──キーンコーンカーンコーン……
耳障りなノイズとともに割れたチャイムが鳴り響いた。
目を覚まし、そっと身を起こす。
暗闇の中を白い光が漂っていた。
取り出したスマホで照らすと、ちょうど同じようにしている4人の姿があった。
「始まったかぁ」
夏樹くんの声が聞こえる。
嫌いな授業が始まってしまった、くらいのテンションだった。当初に比べると信じられないくらいの余裕と落ち着きぶりだ。
静かに立ち上がり、誰からともなく黒板の前あたりに集まる。
「……最後になるかな」
朝陽くんが呟いた。少し不安気に聞こえる。
「そうなるだろうな。僕たち全員、それか少なくとも僕と日南と成瀬は」
高月くんの言葉を受け、左腕の傷が頭に浮かんだ。
残機1という追い込まれた立場にあることを改めて実感する。
「…………」
ひっそりと息をついた。
大丈夫、と声に出さずに返す。
そうはさせないから。彼らを死なせたりはしない。
「……じゃあ、わたし────」
「ちょっと待った!」
化け物の元へ向かおうとしたところ、柚に引き止められた。
その勢いの割に、ふたこと目が出てくるまでに間があった。
慎重に言葉を探しているのだと思う。
「あたし……やっぱり、今頭の中にあるこの記憶が偽物だなんて思えない」
「え?」
突然、何を言い出すのだろう。
予想外の言葉に驚いてしまう。
「てか、思いたくない。この中に“裏切り者”がいるのは分かってるけど……それが誰だろうと殺せるわけないと思う。だから」
こちらに向き直った柚は、まっすぐな眼差しを注いできた。
「あたしも花鈴の言ってた可能性に懸けてみたい。一緒に」
化け物と、白石芳乃と話してみる、という方法のことだろう。
まさか賛同してもらえるとは思わなくて、目を見張ったまま彼女を見つめてしまう。
でも、思えばそうだった。
柚はいつでも、わたしを信じてくれていた。
わたしには本心を見せてくれたし、命懸けで守ってもくれた。
一度は道を逸れたけれど、あんなことが繰り返されることは二度とない、と言いきれる。
「俺も!」
すぐさまそんな声が上がって、見ると夏樹くんが手を挙げていた。
わたしと目が合うと、少し気まずそうに逸らして腕を下ろす。
「だって、花鈴だけに背負わせるんじゃ、おまえが犠牲になりに行くようなもんだろ? いや、もちろんうまくいくって信じてるけどさ」
慌てたようにそう言うと、ひと呼吸置いた。
眉を下げつつ、続きを口にする。
「色々あったけど……てか、色々しちゃったけど。ひとりを見殺しにするとかできない。あのときは本当ごめん」
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