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「お待たせ、さくらっち」 ぼくはコンビニで買ってきたみたらし団子と焼きそばを彼に見せた。 「そろそろお昼の時間だよ。休憩しながら、これからどうするのか考えよう」    近くのベンチに腰をかけ、団子と焼きそばを取り出した。みたらし団子のパックを開けて、さくらっちに一本渡す。彼はほっぺいっぱいに団子を詰め込んで、もきゅもきゅと口を動かしている。 「これ、なんていう食べ物なんだ?」 「みたらし団子だよ。知らないの?」 「あぁ、初めて食べた。とても美味しいぞ」 「それは良かった」  まさに花より団子で、三本あった団子のうち、彼は一気に二本平らげてしまった。気に入ってもらえたようで何よりだ。彼が残った木の棒をガジガジかじっているのを見て、ぼくはあることに気づいた。  こうやって家族以外の人(?)とお花見をするのは、ぼくにとって初めての経験だった。その事実に気づいた瞬間、何となくむず痒くなって、残っていた最後の一本を一気に食べてしまった。それを隣で見ていたさくらっちは、何とも言えない悲しそうな顔をしていた。  団子を食べ終わったあと、ぼくはずっと疑問に思っていたことを尋ねた。 「悪人退治って言ってたけど……悪人って誰のことなんだ?」 「ポイ捨てをしたり、桜の枝を手折ったりする連中のことだ」 「お花見のマナーが悪い人のことかい?」 「そうだ。あいつらがいなければ、桜はもっと生き生きと咲いていられる。おれはコイツらを守りたいんだ」  そう言った直後、桜の木々が風に揺られ、数枚の花びらがひらりひらりとさくらっちの頭の上に落ちていった。それに気づかない彼は、最近の人間は桜を見るのが下手くそだ、とぼやいている。その花びらを取ってやろうと手を伸ばしたとき、突然後ろから声をかけられた。  
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