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 桜並木の通学路は観光客でいっぱいだ。立ち止まって写真を撮る人や屋台で買ったチョコバナナを歩きながら食べる人。そいつらをうまく避けながら早足で歩いたけれど、どうしてもいつものように歩けない。    小学生のころは身体がとても小さかったから、道を塞ぐ観光客の合間を縫って、いつも通りの時間に帰ることができた。しかし残念なことに、中学生になって急に身長が伸びたので、周りに合わせて歩くしかなかった。桜なんて楽しむ余裕のないぼくは、いつもより数倍遅いテンポに苛立ちを募らせていた。    
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