紙男

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紙男

水は知っている 水が知っていることを知っている 罪の重さをふるい分ける 紙は罪で 罪を固めて 記す 文字がない頃は優しい記憶が繋いでいた 文字は鎖となって罪を紙に閉じ込める 水は紙を許してほどいてまた罪を記すためにまっさらな紙にする 水はさらさら流れて ある男がいた 紙漉きの名手と呼ばれていた その男は夜な夜な自分のために紙を漉く 好きな女の口を拭いた懐紙で自分の汗を拭く 溶かして紙にする 自分の口を拭いた紙を溶かして紅吸紙を作り女にやる 女の婚礼の招待状を細かく裂いて溶かして精を放つ 何度も溶かして何度も掬って 紙は罪を濃くする 毎夜 水だけはさらさら流れる
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