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その時から、同棲のような状態になった。
「両親がいなくなって、宏海とも離れて、生まれた時から暮らしたマンションも出て、それまでの環境があっさりなくなる経験をしたんだから、不安定になるのが当然」
宏明さんらしい、優しい見解だった。
「とにかくこれからは俺が側にいるんだから、それをちゃんと分かるようにする。仕事は外せないけど、それ以外はずっと一緒にいる」
と言って、実際そうしてくれた。
仕事終わりにアパートに来てもらうか、学校帰りにマンションに行くかして、毎日朝まで一緒に過ごした。
私が最近ろくに眠れていなかったことを知ると、シングルベッドをダブルベッドに買い替えて、毎晩一緒に寝ることにしてくれた。
「出張なんて行ってる場合じゃなかったな。留守にして悪かった。今日からはゆっくり眠ろうな。大丈夫、もう1人にしないから」
毎晩腕の中で眠らせてくれた。
温かい腕と胸を独り占めにすると、焦る気持ちはどこかへ消えて、ぐっすり眠れるようになった。
眠れるようになると、自然と食欲も戻ってきた。
「宏明さんってお医者さんみたい」
「いや、医者だよ、実際」
「そうだった!」
宏明さんは、おかしそうに笑った。
「ちょっと痩せちゃったな、何か食べたいものはないか」
と聞いてくれたので、
「前にしてくれたみたいに、ファミレスで色々シェアして食べたい、宏明さんと一緒のものが食べたい」
遠慮なくリクエストした。
「……かわいいこと言うな」
後ろを向いて、照れていた。
その日の夜はファミレスで色々オーダーして半分こして食べた。持ち帰り用のケーキも買ってくれた。
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