不安

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「紅は育った環境が複雑で、今までは周りに気を遣い過ぎてた。頑張りすぎてた。 いきなりは無理かもしれないけど、俺には気を遣わないで、好きなようにしていい。気楽にしてほしい。ずっと一緒にいるから、どこにも行かないから」  折に触れてこんなことを言ってくれた。  長年の習性は簡単には変わらないけど、宏明さんの前では楽に息ができるようになった。泣き虫になって、甘えん坊になった。  宏明さんは、どんな私でもいつも受け止めてくれた。  そうしているうちに、徐々に気持ちが安定してきた。  不思議なことに、宏明さんの様子もちょっと変わった。  私は笑顔が増えて、宏明さんは自分のことをアテにならない、と言わなくなった。 「最近、アテにならないって言わないね」 「紅にアテにされないと困るからな」 「……すごいアテにしてるなー」  パズルのピースがカチッとはまった感じがした。  お互い必要な存在になった感じ。 「私のこと、いつから好きだった?」 と聞いたら、 「覚えてないけど、ずっと前から。伝えるつもりはなかったけど、あの時に気が変わった」 って言ってくれた。  私はいつの間にか、あの夢を見なくなった。  あの夢は、きっと寂しさと満たされなさの現れだったのだろう、と思った。 「もうあの夢見たくないから寂しくさせないで」 と言ったら、 「わかったわかった、オレのお姫様」 って笑った。  愛しさがあふれる。 「なんであの時オレだったんだ」 と聞かれた。 「そんなの決まってるよ。 宏明さんは、私のガス抜き役で、お兄ちゃんみたいで、1番頼りにしてる人だったから。信頼してたから。全部預けてもいいって思えたのは宏明さんだけだったから。 他の人とか、考えなかったよ。 ガス抜きなんて、他の人にはできなかった。宏明さんだから安心して色々話せたの。 気づいてなかったけど、多分ずっと前から好きだった。戸籍のことがあるから遠慮してたけど、あの時にはもう好きだったんだよ、きっと」 「……なるほど」  満更でもなさそうだった。
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