59人が本棚に入れています
本棚に追加
由子ちゃんとバーで
私の気持ちが安定して、宏明さんとできるようになったら、由子ちゃんにこれまでの色々なことを話したくなった。
「高橋くんが、連絡とれなくなったって心配してるよ、2人、何かあった?」
心配してくれてたけど、宏明さんとの関係が安定するまでは、先行きが不安で話す気にならなくて、お茶を濁していた。
由子ちゃんと飲みに行っていい?と聞くと、飲み過ぎるなよ、帰りは迎えに行くから連絡して、と送り出してくれた。
由子ちゃんが連れて行ってくれたのは、バーだった。
居酒屋とかじゃないんだ、と意外だった。
由子ちゃんは、
「このお店、父の後輩がオーナーなの。ここ以外では飲むなって言われてる。バーテンさんに、お酒は度数の低いのを1杯だけ、って指示が出ててね。まあ、20歳までは仕方ないよね」
と苦笑した。
早い時間だったから、お店には他のお客さんはいなかった。
カウンターだけのバー。
初めて入ったけど、照明は暗めに落としてあるのに、キラキラしていた。
「モモタさん、こちら友達の紅ちゃん。私と同じ19歳だから、1杯だけね。今日はー……カルアミルクにしようかな。紅ちゃんお酒初めてだから」
「承知しました」
モモタさん、と呼ばれたバーテンさんは、グラスを2つ出して準備を始めた。
私は由子ちゃんに、これまでのことや私のことをみんな話した。
時間はかかったけど、由子ちゃんはじっくり耳を傾けてくれた。
私の環境を話した上で高橋くんの言葉を伝えたら、由子ちゃんはキレた。
「あの男……何を勝手なこと言ってくれちゃってんの。
いい加減にしとけよ、コラ」
あの時みたいにドスのきいた声で、怒りをあらわにしてくれたので、私はそれに救われた。
「紅ちゃん、高橋くんに引っかからなくて良かった。もう放っておいていいよ。私も放っておく」
最初のコメントを投稿しよう!