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バイバイ、美帆子さん
宏明さんとの関係が安定して、もう大丈夫って思えた頃、2人で美帆子さんに会いに行った。
会いに行く前、旅に出る前の宏海ちゃんから聞いた話を宏明さんに伝えた。
理解はできても、どう咀嚼していいかわからなくて、伝えてもいいものかも判断できずに、ずっとモヤモヤしたまま自分の中に抱えていた。
だけど美帆子さんに会うなら、情報は共有しておかないといけない。
いまだにどう納得したらいいかわからなくて、と前置きをして話し出した。
努めて内容だけを正確に感情を込めずに、と思ったのに、美帆子さんと結婚する気はなかったんだって、と口にしたところで泣いてしまった。
宏明さんは、宏海ちゃんの気持ちや3人の状況をきちんと把握していた。
ただ、宏海ちゃんが美帆子さんと結婚するつもりがなかったことは知らなかった。
「あいつ、あの時、関係ないとかほっといてくれとかってとうとう本音を言わなかった。……なんだ、結婚するつもりがなかったって。ゲスじゃねえか。……ああ、本当のことを言ったらオレに殴られると思ったのか。まあ、言わなくても殴ったけど。……こんなことならもっと痛い目にあわせておくんだったな。帰ってきたらぶちのめしてやる」
宏明さんは、泣きじゃくる私を胸に抱きながら怒っていた。
「支えが必要だったって言われて、何も言えなかった。私だって宏明さんの支えがなかったら潰れてたから。だけど……だけどあんまりだ。美帆子さん……。それに、お母さんもひどい。宏海ちゃんの気持ち知ってて……応えるつもりがないから逃げたんだ。2人ともひどい。ずるい」
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