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私はずっと誰にも言えなくて抱えていたことを打ち明けられた安心感もあって、ぐずぐずになってしまった。
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、宏明さんにすがりついた。
「紅、この件はもう考えなくていい。もう沙織さんも宏海もいないんだし、美帆ちゃんには申し訳ないことをしたけど、それは宏海が悪いんであって紅に落ち度はない。あとはもうオレに預けて、忘れていい。もっと早く聞ければ良かったな。ずっと1人で抱えて、辛かったな」
背中をゆっくり撫でられて、泣かせてもらって、安堵感が広がった。お父さんってこういう感じかな、と思ってしまった。言えないけど。
「これからは、何でも話せよ。1人で頑張らないで、オレに預けろ。オレには何言ったっていいんだから。あれこれ考えないで、とにかく話せ。いいな?」
「あれこれ考えなくちゃならないことだらけだった。言えないことの山だった、お母さんにも、宏海ちゃんにも、美帆子さんにだって……。
宏明さんには言ってもいいの?嫌いにならない?」
嫌われないように、捨てられないように、自分は二の次で。
母に対しては放棄したことだけど、長年の習性はすぐには抜けない。
嫌われないか、つい警戒してしまう。
「あの3人と一緒にするな。紅はオレの1番なんだから、嫌いになんてなるわけない。紅は嫌いになるか?オレが何か言ったからって」
「……なるわけない」
「なー?」
宏明さんはニコッと笑った。
私はぐずぐずと宏明さんの胸に抱かれながら、
「お父さんってこんな感じ?」
と、早速言いたいことを言った。
「……マジかよ」
宏明さんはガックリしてたけど、なるほど、嫌われはしなかった。
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