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「ん、んっ、んー」
唇を離された時はもう息も絶え絶えで、玲喜は荒い呼吸を繰り返しながらゼリゼを見上げる。ゼリゼは一度ベッドを降りると、手のひらサイズの四角い箱の中から小さな球型の物体を三つ取り出して、手に乗せるなり戻ってきた。
「魔法薬で調合した潤滑剤のような物だ。これでお前の中を慣らす。足を開いて少し力を抜いていろ」
「ん」
玲喜は頷いて言われた通りに足を開く。
後孔に押し当てられた球体は蕩けるように内部に飲み込まれていった。
それを三個入れられると、中の熱で溶け出してきたとろみのある液体がシーツに零れ落ちる。液体を指で掬ったゼリゼの指が一本潜り込んできた。
難なく指を動かせるのを確認して二本目が追加される。容赦なく前立腺を押し潰され、玲喜の体はその都度ビクビクと戦慄いて内部の指を締め付けた。
三本、四本と増えていく指が中を拡げながら玲喜を追い詰めていく。久しぶりなのもあって興奮しているのは否めない。
そのせいで酷く敏感になっていて、ゼリゼに与えられる全ての事が気持ち良かった。
「あ、……あっ、ああ! や、あっ、あ、ゼリゼ……もう、これ以上すると……ッ、イク……から、ダメっだ」
指を抜かれた後孔がヒクリと動き、内部に雄を誘うように収縮を繰り返している。手早く服を脱いだゼリゼが、陰茎の先端をソコに当てがった。
「玲喜、愛している」
息を呑んだ。耳を喰まれながらゆっくりと挿入され、聴覚から犯された玲喜は堪らずに吐精する。
「や、あっ、ああ、あーーー!」
挿れただけでイってしまった玲喜を気遣って、強い刺激は避けて緩やかに律動が始まる。
「ゼリゼっ、あ……ッ、ぁ、ああ……ッ、や、奥もイク……から、イク……ッあああ!」
「く……ッ」
中イキを繰り返す内部の動きにつられてゼリゼも達しそうになったが、すんでの所で堪えた。玲喜の腰の動きに合わせて抽挿を繰り返す。
「あっ、あああ、ア……ン、アア~~!」
もうずっと繰り返し内部で達してゼリゼの陰茎を締めあげる。勢いのない精液がトロトロとこぼれて、玲喜の下っ腹の上に溜まっていった。
「玲喜」
興奮で甘く掠れたゼリゼの声音に、玲喜の体が反応してビクビク震えた。
「ゼリゼ……ッ、あ、あ、ん、気持ち、いい」
玲喜の手を取り、ゼリゼは己の手を重ねて握り込む。恋人繋ぎにしたまま、玲喜の内部をゆっくりと犯す。
「あ、あん、あああっ、あ……、それ……ッ、いい~~! あ、ん、ぁあ、ゼリゼも……気持ち……っいい?」
「ああ。良すぎて、ッ、ここから出たくないくらいだ」
口付けを強請り、舌を絡ませ合う。奥は避けて前立腺のある浅い部分だけを擦り上げる。
「あ、ああ、ん……アアーー!」
玲喜の内部でゼリゼの欲が弾けた。
4
「城下町でまたいざこざが起こっているだと?」
「はい。今回は負傷者も多数出ているようで教会からも支援が来ています。いかがなされますか?」
警備隊の一人がゼリゼの元へ知らせがきたのは、今から夜食につこうかという少し遅い時間帯だった。
夜間に起きた事は次の日に対応しているのだが、今回は内容が内容だけに行かざるを得ない。
ゼリゼはハァーと大きくため息をついた。
「またアイツらの企みじゃないだろうな?」
面倒臭そうにゼリゼが舌打ちする。
もしそうならゼリゼが居なくなったのを見計らってまた玲喜に絡みに来るだろう。そう思うと玲喜は苦笑せざるを得ない。ゼリゼは腕の中に玲喜を囲った。
「それならオレも連れて行ってくれないか。怪我人いるんだろ? オレはゼリゼと一緒に居たい」
治癒能力を持つ玲喜が居ればゼリゼとしても助かる。
しかし教会の連中も来ているとなれば、逆に玲喜を危うい立場に追いやる事になってしまう可能性が高い。ゼリゼは究極の選択を強いられているような気分だった。
「なら、易者のように目元だけ出るように変装してみては如何でしょう? ヴェールが取れた時用に、魔法で髪型や色を変えておけば二重変装みたいにも出来ますし、アーミナにも同じ格好をさせれば目眩しにもいいかと。それに玲喜なら詠唱破棄して回復術をかけられるようなので、私やゼリゼ様で玲喜の周りを囲って見えないようにして、治癒魔法を使うという手もありますよ。もし玲喜だけを此処に残されて行くとなれば、マギル様とジリル様は確実に現れると思いますし」
額に左手を当てて考えていたゼリゼだったが、ラルの意見に賛同するようにやがて頷いた。
魔法で髪色や髪型を変えて服も易者風になるように着替えた玲喜とアーミナ、ラルとゼリゼは兵士たちを従えて城下町を訪れている。
「もう~何で僕らが駆り出されなきゃいけないの~? 超~面倒くさいんだけど~? で、何であいつらは暴れてるわけ?」
「ジリルさっさと終わらせて帰ろうぜ」
不満たらたらにしている見知った顔を見て、玲喜たちは唖然としてしまった。
黒幕だと思っていた二人が先に来ていて、文句を言いながら活動しているのだから至極当然な反応だったと言える。
「アイツらじゃなかったのか……」
肩透かしをくらい足を止めてしまったが、その二人の先で殴り合いの喧嘩が起きているのが分かり目を向けた。
「なんか、様子がおかしくないか?」
玲喜がそう言葉にする。
喧騒毎が起きているというのに、全体的に覇気がない。
夜だからなのか、買い物に来た時に見たような雰囲気ではなくて何処か殺伐としていた。
個人の意思は感じられず全員操られているように瞳に生気も感じられない。否、違う。人ではない。人の姿をしたナニカが民衆の中に多数混ざっているのだ。
それらの姿が揺らめき、歪な形に変わる。
風船か何かに人の負の感情だけを入れて膨らませた状態になっていた。
少しの力を加えれば、今にも爆発してしまいそうだ。そこへマギルとジリルが近づいていく。
——アレに触れてはダメだ。
ザワリと総毛立つ。
直感的にそう思った時、玲喜は叫んでいた。
「マギルっ、ジリル、駄目だっソレに近付くな!」
「玲喜?」
「קירי אליסון」
玲喜はバレるのを顧みずに呪文を口にする。
白い閃光が玲喜を中心に大きくなり始め、全てを包み込んで禍々しい気配を押し流していく。
光が落ち着いてきた時には人型のナニカたちは、空気の抜けた風船のようにひしゃげて地に落ちていた。
「何だ今のは?」
「誰がこんな高難易度の魔法を使った⁉︎」
さっきまでとは違った騒めきが場を支配していく。
ゼリゼは玲喜を背に庇い、気が付かれないように手で口元を隠すと、ラルとアーミナに言った。
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