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「神って美味いのか?」
マギルの言葉に玲喜の肩がピクリと震える。
——毒……とかないよな?
そう思いながらも、一応毒消しや状態異常解除の魔法を全員にかけた。
「あはは、玲喜、神様さばいちゃったの~? 僕らも食べる~」
ジリルとマギルも混ざった。
——ま、いっか……。皆んな喜んでるし……。
玲喜自身すでに何個も食べているし、むしろお腹いっぱいだ。
身も引き締まっていて弾力があり歯応え抜群で、タコ焼き自体も外はカリッとしていて中はトロトロ。我ながら上手く出来たと自負している。
——神様ごめんなさい。皆んなと美味しくいただきました。
心の中で謝罪する。
「玲喜さま、差し入れですー!」
「もしかしてこれお酒? ありがとう」
声を掛けてきたのは、定期的に味噌を購入している店の店主だった。
「いつもお世話になっておりますので、ほんのお礼です」
自家製のワインのような飲み物を貰い、玲喜はその場でグラスに注いで貰って口をつける。
それを見て焦ったのはゼリゼだった。
玲喜の酒の弱さは身を持って知っている。
なんせ玲喜と体の関係を持つようになったのは玲喜が酔ったせいだ。
しかも玲喜は間違いなくキス魔であり、無自覚な誘い受けである。焦るどころじゃなかった。
「おい、玲喜……。お前たちちょっとキナリを頼む」
「はい。キナリ様、私どもと一緒に召し上がりましょうか」
使用人たちにタコ焼きを頬張るキナリを任せて、ゼリゼが駆け寄る。
ゼリゼが止める声は届かず、玲喜がグラスの中身を飲み干した。
ゼリゼとの一件以来、妊娠していたのもあってさすがに飲むのを控えていた玲喜だったが、パーティーという場で勧められては飲まないわけにはいかなかった。
しかも口当たりよく、甘くて飲みやすい。最高と言って良いほどに美味かった。
「美味いなこれ」
「光栄です。もういっぱいどうぞ」
「ありがとう」
促されるままにまた一杯酒を煽る。
飲みやすさの割にその度数二十度。五%のアルコールさえも満足に飲めない玲喜などいちころだ。
その横では、ジリルとマギルがタコ焼きに夢中になっていた。
「あつっ! これって表面よりも中の方が熱い~唇んとこ火傷しちゃった~玲喜治して~」
ジリルの言葉に玲喜が顔を上げた。
「んー……、来いよジリル……舐めれば治るから」
すくっと立ち上がって、ジリルの元へ玲喜がフラフラと歩いていく。
「へ? 舐める?」
ジリルが目を瞠った時には、胸元を引き寄せられたジリルの口端は玲喜にペロリと舐められていた。
「ちょ……、わー、えーと、玲喜様? もしかして酔っていらっしゃいますか?」
「んー? フワフワしてるだけーー……。あれ……ラルも双子だったんだな」
「はい。酔ってますね。それも、かなり」
玲喜に引き寄せられたまま固まってしまったジリルから、ラルが慌てて玲喜を引き離した所でゼリゼがやっと追いついた。
「おい、ジリル抜け駆けだろ。玲喜おれも!」
「させるか!」
詰め寄ってきたマギルからゼリゼが玲喜を背に隠す。そのゼリゼの背に玲喜が抱きついた。
「ゼリゼ~」
「玲喜! お前、酒癖が悪過ぎるのを自覚しろ。俺の前以外では飲むな!」
振り返ったゼリゼが玲喜に口早に告げる。
「また怒ってるのかゼリゼは。しょうがないな」
ムチュ、とゼリゼの唇は玲喜に塞がれた。
「機嫌直ったか?」
「……」
今度はゼリゼが固まった。
鎮静効果は抜群らしい。
ゼリゼは玲喜を横抱きにするとその場から転移魔法で姿を消した。
「……」
「……」
「玲喜ってさ~、もしかしてキス魔?」
静寂に包まれてしまったタコパだったが、初めて食した食べ物だけあってまた盛り上がりを見せ、主催者不在のままだったが全員大満足で帰って行った。
「お前はとりあえず酔いを覚ませ」
王室に連れ帰られた玲喜は酔い覚ましに水を飲まされていた。
「お酒もっと飲みたかった……」
「駄目だ」
ぼんやりとしながらベッドの上に転がって玲喜がウトウトとうたた寝している。
度数の高い酒を煽ったのもあり、今は通常の酩酊状態すら通り越して世界が回っていた。
「ゼリゼ~。今オレ、メリーゴーランドに乗ってる」
「何だそれは」
「クルクル回るお馬さん~」
「お前はもう寝ろ」
これはダメだと判断し、ゼリゼは玲喜を寝かしつけた。
ハッと目を覚ました玲喜は、部屋の隅に置いてある椅子に腰掛け腕組みをしているゼリゼと目が合った。
ある程度の時間を寝て起きれば体の不調は自動回復する玲喜は、二日酔いとも無縁である。
しかし、ジリルとの記憶が徐々に蘇ってきて、その顔色は次第に青くなっていく。
——やってしまった。
いくら勧められたと言ってもアルコールは飲むべきではなかった。今となってみれば後の祭りである。
「あの、ゼリゼ……」
玲喜の視線が泳いだ。
「詳細に覚えているだろう?」
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
——ぶっちゃけゼリゼがかつてないほどに怖い。笑っているのに全く笑ってないって何?
見て分かるほどに怒っている闇堕ちバーサーカー状態ではなく、静かに内側から怒りを爆発させている。
自分が悪いのは承知の上だった。
抗いもせずに受け入れて、ベッドの上に押さえつけられながら玲喜は少し先の自分を思って黙祷した。
たぶん死ぬ。
「お前は身重な時の方がアルコールも飲めないし良いだろう? この先ずっと孕んだままでいるか?」
「いや……さすがにそれは……」
しどろもどろになりながら答える。
「周りからも期待されているしちょうどいい。それと、孕むついでにもう一段階上の快感も教えてやろう」
「ゼリゼ?」
下っ腹を押され、掌で探るように刺激を与えられる。
「この辺までは入るぞ」
何が、とは言わずとも分かった。
無理だ。そんな所まで入る気などしない。
玲喜はゆっくり左右に首を振ってみせたが、ゼリゼは口角を持ち上げるだけで何も言わなかった。
死刑宣告どころではなかった。
——ヤバいヤバいヤバい。本当にヤバい。どうしよう。
有無を言わさず先にシャワールームに連れて行かれた。
魔法で何処からともなく自動で出てくる泡で洗われ、程よい温度のお湯につけられる。
湯の中でも息が出来るのが不思議だ。
まだこの魔法は教えて貰っていなくて、今度習おうと呑気に考えていると下肢の奥まった部分に違和感を覚え、玲喜は体を震わせてペタリと床に座り込んだ。
浸かっていた湯は無くなっているが、目に見えない何かが後孔に潜り込んできた。
「ゼリゼっ、ゼリゼ!」
焦燥感に襲われて早口でゼリゼの名を紡ぐ。
「どうした?」
淡々とした声で返され、玲喜は一度言葉を飲んでしまったものの、違和感が更に増した事により口を開いた。
「ゼリゼ……っ、中……何か、入ってきた。なんだ、これ」
「慣らしておかないと辛いのはお前だからな」
至極当然とばかりに返される。
トロリとした温い液体が内部で弾け、それと同時にまるで指でかき回されているような感触が広がっていく。
「ひっ」
どんどん太さを増していく感覚がむず痒くもあり、気持ち悪い。
「潤滑剤を含んだ無色透明な触手のようなものだ。体に害はない」
信じられないゼリゼの言葉に玲喜は顔を上げた。
ゼリゼは壁に寄りかかったまま腕組みをして、ジッと玲喜を眺めている。
もう指三本分くらいの太さになっている異物は、ただ前後に動くだけだったが意思を持ったように前立腺をとらえたまま二手に分かれてもっと奥へと入り込んできた。
「う、あ、ああ! や、ゼリゼっ、んぁッあ、これ、とめ……てくれ」
「随分と良さそうにしているように見えるが?」
内部だけではなく陰茎以外の玲喜の性感帯全てを何かが刺激していく。
「よくない! あ、ァア、いや、だ。コレ……、ゼリゼじゃ、ないから。ひ、あ、嫌……ッだ」
「嫌? だがお前は別に俺じゃなくとも構わないだろう? ああ、代わりにジリルでも呼んでやろうか?」
フルフルと左右に首を振る。
「違っ、オレは……っ」
「何も違わないだろう。暫くの間そのままソレと遊んでおくんだな。俺はこれから出掛ける用がある」
ゼリゼの言葉に耳を疑った。
出掛けるとなれば、このまま長い時間放置されるかもしれない。
空調は適温になるようにされているし、もう自動的に作動する魔法で髪も体も乾いている。服を着ていなくても寒さを感じる事もない。
だが、うっかりと誰かが入ってきてしまえばこの痴態を見られてしまう。
「嘘……」
「ここは寝室内に含まれている。シャワールームからは出れるし、お前が望めば服も着れるぞ。ベッドまで行ったとして、そこに誰も来ないとは限らないけどな?」
心の中を読まれたような台詞に、玲喜の体が震えた。
「ゼリゼ!」
「お前は寝室からは出れないが、外からは入って来られる。誰にも気付かれないといいな? 言っておくが、その魔法は俺にしか解けん」
ただただ絶望しかなかった。
玲喜の叫びも虚しく、ゼリゼは本当に部屋を出て行った。
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