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ACT②フック!!
爆ぜる心音。
焦る鼓動の爆音。
クチャクチャ、クチャクチャ。
何故か耳障りなガムの音で気を紛らわす。
ーー待てよ、俺……!
ーー落ち着けよ、俺……!
オヤジも多数の視線に怯んだのか一時撤退していた。
その隙にフーッと脱力、冷静さを取り戻す。
周囲の視線には彼女の視線も混ざっていた。
つまりだ。
彼女は痴漢に狙われている現状を知らない。
オヤジが舐る俺の太腿ひとつで、本来のターゲットである女子高生は救われるんじゃないのか?
あと二駅の辛抱だった。
彼女が着ている制服の高校生が降りる駅と、俺の服を挟んだドアが開くのは同じ。耐えられたら勝ちだ。
ーー俺は彼女を守る!
正義を掲げたところで、痴漢オヤジは何事もなかったように俺のスラックスを探し当ててきた。
第二戦の開幕だと指は果敢に弄る。
(うっ……く、んはぁ……)
卑猥な俺の声よ止まれ…! 喉から出すな!
オヤジの手に屈するなッ!!
股間のチャックに伸びて来た指を腰を捻って交わす。
攻めパターンはだいぶ読めて来た。
ーーなぁオヤジ? いい加減に気付いてくれよ……。
俺の太腿は柔らかい生足じゃない。
あんたが狙ってる下着は夢なんてハナからない、無骨なボクサーパンツなんだ。
そこまで考えた時、ハッとして息を飲んだ。
ーーまさかッッ、そういう趣向の奴!?
驚愕どころの騒ぎではない。
狙われていたのは"俺"だという泥沼の最悪フラグだ。
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