口のうますぎる男

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新田拓馬は口が達者だった。 学校ではいつも学級委員長を任された。 学業が優秀だったからではない。やろうとしていることに賛同が集まったからでもない。 とにかく話がうまかった。 クラスメイトを心をつかむのがうまかった。 校内の委員長選挙では、圧倒的な演説を見せた。 新田拓馬はゆったりと話しはじめる。学校内でだれもが不満に思ってるだろうことを挙げていく。共感を呼んだ頃合いで、声のトーンを上げていく。自ら興奮していき、その興奮を伝播させていく。新田拓馬の演説が終わると、その場にいるだれもが熱狂していることがわかる。会場内に熱が残ってるのだ。 学校を卒業してからも、新田拓馬は口だけでのし上がっていく。 会社の面接では、みながうらやむ人気企業からたくさんの内定をもらった。 入社後はプレゼン力でさまざまな仕事を生み出し、出世競争にも勝った。 だが致命的なことがあった。 新田拓馬はモテなかった。 見せかけだけ要領がよくて、中身は空っぽ。 そのことを女性たちは見抜いていたのだ。
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