櫻の下で咲く想い

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「にがぁい!」 「あらあら、美織(みおり)にはまだ早かったかねぇ」  母が作った土筆(つくし)のつくだ煮。祖母は美味しそうに食べるが、幼い私は苦くてひと口しか食べられなかった。 「春の皿には苦味を盛れってね」 「なあに? それ」 「昔からの言い伝え。春は苦いものを食べるのが体にいいんだって。ばあちゃんは、ほろ苦い春野菜を食べると、春だなぁって思うんだけど、美織はどう?」 「思わない」 「ふふっ、そうかい。大人になったら分かるよ」  祖母は味覚で季節を感じる人だ。
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