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「おいゆゆ。
ちゃんと寝てろ。ふらついてんじゃん」
「っ分かってるもん」
眉を顰めたせいちゃんにベッドへと押し込められ、わたしは「ちょっとくらいいいじゃんか」と不満気な表情を作る。
「つーか、検査結果はもう聞いたのか?」
「んー……
今おかーさんが行ってる……」
ベッド近くにある椅子へ腰掛けたせいちゃん。話題が病気のことへ移ると、わたしはまた不安で泣きそうになる。
せいちゃんに見られたくなくて顔を背けようとしたけど、直ぐに気付かれた。彼は何も言わずに、そっと涙を拭ってくれる。
ガラガラ―――
「あら、せいくん来てたのね。
……ゆゆ、また泣いてたの? 毎回面倒見てもらってごめんね〜せいくん」
重苦しいレールの音と共に病室の扉が開いて、お母さんが現れた。その手には、もう見慣れてしまった兎柄の入院バッグがある。
「いえいえ、ゆゆを見とくのは俺の役目ですから」
「ふふっ、本当頼もしいわ〜」
こうして三人揃うと、部屋の雰囲気が明るく穏やかになって、ほんの少し、呼吸が楽になる。そして、早くお家に帰りたいという想いが、物凄い勢いで募っていく。
「先生ね、後二、三日で退院できるって言ってたよ」
「ほ、ほんと?!」
「良かったじゃん。
これで花見、行けるな」
もう少しかかるかと思っていた。さっきまで落ち込んでいた気分が徐々に晴れていゆく。こちらを見て、口角を上げたせいちゃんに、わたしも「うん!」と笑顔になった。
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