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桜が見たい
死にたくない死にたくない―――。
わたし・櫻井ゆゆは、ベッドで小さく震えていた。視界に広がるのは一面の白。それが、わたしの不安を倍増させる。
真っ白い壁に、真っ白い天井。
すごく閉鎖的な空間で、息がしづらい。
清潔感溢れる白いシーツは、わたしが嫌いなもの。
けれどそんな気持ちとは裏腹に、心細さを耐えるため、わたしはギュッとシーツを口元まで引き上げる。目の前がゆらゆら揺れているのは、きっと瞳に浮かんだ涙のせいだ。
―――死にたくないっ……。
「ゆゆー。
……なに、まーた泣いてんのかよ」
「いっ……」
パチン、と額の辺りで音がして、わたしは顔を歪めた。
恐る恐る目を開けば、そこには小さな頃からわたしの面倒をよく見てくれる、二つ歳上の幼馴染・せいちゃんの姿があった。いつ来たのだろう。全く気づかなかった。
「せいちゃん……っ」
「何、どーした」
掴んでいたシーツを放って、彼の身体にしがみ付けば、その大きな手がわたしの頭を優しく撫でてくれた。さっきのデコピンみたいに、ちょっぴり意地悪なせいちゃんだけど、わたしの甘えにはきちんと応えてくれる。
その気怠けな声に、酷く安心感を覚えて、思わず嗚咽を漏らした。
「うぅ、せいちゃんっ。
どうしよ、またお花見行けなくなっちゃう……っ」
「桜が見たいよおっ」と誰に向けてか、懇願する。
頬を伝う雫は、ポタポタと彼のシャツを濡らし、また自分の着ている白い入院着へ染みを作っていった。
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