星々の彼方への旅

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星々の彼方への旅

宇宙で起きていることの99%は 謎であり我々は宇宙で起きていることの 1%も理解できていない… 進化した人類は60万年前に地球の周りを回る月の内部に住む他の宇宙から来た人類に似た種族との交流を深めた。 月面内部の地下資源を利用しての巨大宇宙船の製造が彼らの目的であった。 しかし、彼らの体は地球に無数に存在する、 ウイルスやバクテリアに対する免疫機構が退化しているため、 月の内部から地球に移住することは断念したのだったが、 人類の科学技術を向上させることによって 自分たちの願いをかなえるべく我々に手を差しのべてきたのだった。 だが彼らの体は宇宙空間での長期滞在により肉体が退化し始め、人類とは似て非なるものに進化してしまった。 もはや彼らにとって肉体に生命の痕跡を残すことすら無意味に思えた。 肉体を持たない。いわゆる我々人類がめざす最終目標地点が永遠の生命だとすれば、 彼らもまたそれをめざしたに違いない。 地球が原始生命から宇宙へ旅立つ生命体を育てる為のゆりかごであったように 彼らは月面内部において建造されている宇宙船に乗って太陽系を離れるために滞在していたのだった。 21世紀初頭には実現できないと思われていた宇宙旅行が、一般市民でも行くことが可能になったそんなある日。 宇宙食を製造している私の会社(Eath foods)も地球の軌道上を回る宇宙ステーションに食糧を出荷するようになり、 最新型の宇宙シャトルのオーロラ5号に乗って宇宙に行く日がやってきた。 宇宙ステーションで働いているガールフレンドに会うために私は種子島に建設された宇宙空港に到着した。 「まもなくステーション3へと向かうシャトルの搭乗手続きを行います。 手荷物をお持ちの方は1番ゲート。 お持ちで出ない方は2番ゲートまでお進みください。」 搭乗券を確認し2番ゲートへと進んだ。 一年前に建造された種子島宇宙港には、 宇宙レストランでの 勤務が決まったガールフレンドを見送るために3ヵ月ほど前にも 一度ここに来たことがあったが、今度の転勤先は月がいいなんて彼女の口から 言い出すなんて最初は驚いたが、 彼女の両親は国際宇宙開発事業団エルゴ協会に所属していて、 4年前から宇宙ステーションで働いていた。 「皆様にお知らせします。搭機はまもなく離陸しますので シートベルトを装着してくださいますようお願いいたします。」 「この最新型航宇宙シャトルVSR1は離陸後10分で大気圏離脱まで シャトルは加速状態に入ります。 最大加速は2Gで無重力状態を体感できますが大気圏離脱まで、飲食物はいっさい取らないようにお願いします。なお、搭機の飛行時間は65分の予定です。」 激しい振動音と機体にひびが入るのではと思えるような揺れ。 音速を遥かに超える重力加速度で声も出せなかった。 宇宙旅行が身近になったとはいえ、 さすがに地球を離脱するということは肉体的には楽であるはずがなかった。 やがて先ほどまでの緊張と騒音が嘘のように静まり返ったかと思うとエンジンの噴射音も消え耳鳴りもしなくなった。 どうやら宇宙空間にたどり着き慣性飛行に入ったようだ。 「お疲れさまでした。無事に等機は大気圏を離脱し、 このまま慣性飛行で40分後にステーション3に到着予定です。」 「窓側のお客様は後方に地球をご覧いただけます。」 機内から、歓声が沸き起こった。窓からは青い地球が見えた。 宇宙ステーション3は2028年から建造され2040年に完成した 最新型宇宙ステーションで2分間で1回転することにより 人口重力を作り出している。 シャトルは宇宙区間を滑空したのち 宇宙ステーション3にドッキングした。 シートベルト着用のサインが消える。 入国審査官のいるゲートを通り 身体検査を受けてた後にパスポートを見せて。 目的地は月への観光旅行であると告げると、 入国審査官の女性が「congratulation have a nice day」と言って、 にっこりほほ笑んだ。 ゲートを抜けてラウンジに出ると、 ガールフレンドのトシコが迎えてくれた。 「ようこそ、ステーション3へ」 「しばらくぶりね、会いたかったわスペースラウンジでお茶でも飲みましょう。」 彼女の案内で、ステーション3展望ラウンジに向かった。 空一面の窓からは宇宙空間に浮かぶ青い地球が見える。しばしの間、私は地球の青さに見とれていた。 彼女のご両親は地球を離れてもう4年になるそうだ。 宇宙ステーションでの仕事は最高でも5年しか続けて勤務できない。 その理由は月や宇宙空間での滞在が長くなればなるほど、 足腰に負担がかかり地球に帰還した際に足腰が弱って立てなくなるのだ。 彼女の両親はもうじき地球に帰還されるらしいが、今は二人そろって宇宙食堂で働いている。 「私は先に荷物を部屋に置いてくるから、少しの間ここで待っていてくれるかな。」 「私が部屋まで案内しましょうか」 「そうだね、助かるよ。そうしてもらおうかな。」 トシコの案内で旅客ターミナルから荷物を受け取り、客室へと向かった。床が少し弓なりに歪んで見えるのはステーション3が円形をなしているからであり、 回転している通路の窓からも青い地球が羨望できた。 そんなとき地球の太平洋だと思われるところから移動してくる 黒い円筒状のUFOのような物体がこっちのほうに近づいてくるのが見えた。 部屋から出た後に彼女と、もう一度スペースラウンジまで戻り、 お酒を少し飲んでから部屋へ戻った。 トシコは、シャワーに入った後に髪を乾かしベットに横になっていた。 夕食はレストランではなく各部屋に配達されるようになっているらしい。 今日のメニューは、 ビーフポテトサンドと サーモンレタスサラダとコーンスープだった。味はまあまあだったが お互いに少し疲れたせいか、 食べ終わると、二人で窓から地球を眺めた。 寝るにはまだ少し時間が早いように思えたが、宇宙開発事業団エルゴ協会の 資料やステーション3の従業員及び観光客の好む食料品の在庫リストに眼を通しているうちに眠くなってきた。 宇宙空間での最初の夜は彼女を抱いて寝た。 翌朝は8時30分発の月行きの直行便に乗り込むために スペースゲートまで向かった。 手荷物検査が終わり荷物を預ける。 月面に向かうシャトルは片道約37万キロを、 時速2万7千キロで14時間飛行し、 月面にあるアルキメデス宇宙港に向かう。 全席ファーストクラスの座席はボタンひとつでベットに早変わりする。 飛行時間が長いので疲れが溜まっている人には充分な休息になるだろう。 シートベルトを着用し、 シャトルは静かに動き出した。 このシャトルは最大速度時速2万7千キロまで加速すると慣性飛行に移る。 シートベルと着用のサインが消えると 私はCAを呼び ホットコーヒーを注文した。 アルキメデス宇宙港に向かう途中でシャトルは月の周回軌道に乗せたが、空港集辺地域の停電の影響で予定はキャンセルされ、近隣のコペルニクス宇宙港に臨時着陸することになった。 初めて観るコペルニクス宇宙港周辺地域には信じられないことに湖も緑の森林地帯もあり 川も流れているではないか、 私は自分が幻覚でも見ているのだろうかとさえ思えた。 緊急着陸する宇宙港は森林地帯の中に確認できた。 空気も水も存在しないはずの月面にどうして大気と水があり、 そしてこんな場所があるとは、ほとんどの地球の人々は まだ知らされていないはずだ。 以前に私が勤めていた出版社の資料施設で、 昔アポロ8号が初めて月の裏側を通過した際に撮影された写真に 月の裏側にある森林地帯が写ってるの見たことがあったが、 誰かのイタズラかトリック写真だと思っていたけど、 空港周辺地域には森林地帯があることは、 はっきりとシャトルの窓からも確認できるのだ。 「お知らせします。アルキメデス宇宙港における着陸施設誘導通信および一時的な停電のため、当機はコペルニクス宇宙港臨時滑走路にまもなく着陸いたします。」 「到着後すみやかにホテルへと移動となりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。」 宇宙開発の初歩の段階から宇宙と月の存在について知らされてきた情報は今でも隠蔽されているし、何らかの目的でここを管理している国際宇宙開発事業団の目的はいずれ明らかになるだろうが、とりあえず我々の運命は存在の知れぬ管理者たちに まかせるしか選択肢はないのだった。 シャトルから降りて施設内に誘導された。 それから我々は空港内の中央ロビーに集合することになり、 シャトルの機長から今回の臨時処置に関する詳しい説明を受けた。 「皆様も気が付いているように、月表面には当施設のように、 空気も水もある森林地帯があることに皆様方は戸惑っていることと思いますが。当施設は約30年ほど前から 宇宙開発事業団エルゴ協会の協力によりまして、月面で限りなく地球に似た環境を再現すべく作られた施設です。 施設内には酸素も充分にございますし、 窓からご覧のとおり植物も育っております。つきましては、 当初の予定であったアルキメデス基地からの連絡が付き次第 今後の予定を再びおしらせいたします。」 「どうかそれまでの間は当施設でゆっくりお過ごしください。」 宇宙港を出ると空港が用意したエルゴ協会の バスが止まっていたので乗り込んだ。 ホテルまでは、わずか5分足らずで着いた。 ホテルのロビーに設置されているスクリーンでは アルキメデス基地での事故のようすが写っていた。 採掘場のクレーター内部に直径20メートル ほどの穴が開いていて、そこから白い煙がわずかだが噴き出しているのが ニュースで中継されていた。報道していたキャスターに見覚えがないことをみると、 このニュースが流れているのは月だけなのだろう。 「アルキメデス採掘場での今回の事故についての現在判明している情報によりますと地下1・5キロメートル付近で掘削機の燃料漏れによる火災が発生した模様で、 現在消火活動を行っているもようです。 今の所分かっている死者は5名で7人が重体で医療施設に搬送されたようです。 この事故に関連して周辺地域に一時的な電力不足及び停電が発生したことをお詫び申しあげます。」 ホテルらしきこの建物のロビーで宿泊の為の注意事項を聞かされ、 私はエレベーターに乗り部屋まで案内された。 部屋の窓からは、先ほど着陸したシャトルと地球では見慣れない 黒い宇宙船が2隻停泊していた。 大きさはシャトルの2倍ぐらいはあるだろう、きっとこれが噂になってる月面の軍事工場で建造されている宇宙船なのではないかと思った。 お腹がすいてきたので4階にあるレストランへと向かうとシャトルに同席していた新婚さんが先にきていて、 窓側の席で二人で食事していた。 わたしもその隣の席に案内され 食事を注文した。 空港で見かけた国籍不明の黒い輸送船が、 上空に浮かんだかと思うと、東の方角へと飛び立った。 あの船は月の表側でどんな作業をしているんだろう。 ここでは複数の人間型エイリアンと交流している地域だと噂されているから 彼らとの協力で仕事をしているのかもしれない。 私が月にまでやってきた理由は表向きは 宇宙食の販売促進の為ではあるが、 実際は月面に存在する地球外知的生命の証拠を 自分の目で確かめたいからであった。 飛び立ったUFOが地球製でない可能性は充分にある。 果たして彼らが存在する証拠を目の当たりにしたからとって 我々の文明はどう対処するのだろうか、 我々は20世紀の後半から宇宙開発に挑戦し、 月面に基地を作り火星や金星にも人類は移住した。 そして今度は太陽系の外に人類を送り込もうとしている。 アルキメデスクレーターの内部に軍事工場があるはずだし、 今回の事故も太陽系脱出計画のトラブルによって起きた 事故だと思う。我々は宇宙空間や月世界においても地球上で 起こっている様々な陰謀と同様様に宇宙開発にもまだ危険はいっぱいあるのだ。地球外知的生命体についてのトップシークレットの情報が一般市民にもれたからといって、 その情報が本物であるかどうかを我々は知ることはできない。 以前からUFOや地球外生命体は、怖いもの、不気味なもの、 人類に危害を加えようとしてる悪い生き物だと我々に信じ込まされてきた。戦後に多発したUFO目撃情報は 影の世界政府による世界征服作戦にとってはまたとないチャンスであった。 他の国々を出し抜いてUFOを飛ばせば21世紀には世界中の人々を震え上がらせることも可能なのだ。 何も知らない人々にはUFOが人類によって作られた乗り物であることは 隠しておいた方が有利ではある。 だが、全てを隠していても人類を管理できないだろう。 それなら少しずつでも情報を漏らさなければならない。 アルキメデスクレーターの上空に 2隻の葉巻型母船が出現し基地周辺では戒厳令がひかれたことにより、 ニユースキャスターはUFOについてのコメントを控えていた。 UFOを操縦しているのはエイリアンであるという証拠は何処にもない。 我々が情報操作によって半世紀以上信じ込まされてきた頭が大きくて 身長が低く大きく黒い眼をしたグレイタイプのエイリアンは、 何処かの国のSF好きな秘密組織が考えだした人工生物か 人工生命体であり、生体ロボットだと思われる。 生殖器がないので彼らは人工的にしか子孫を作り出せない訳で、 そのような不完全生物が遠い銀河の向こうから遥々と 地球に観光旅行にくるほど暇であるとは考えにくい。 夕食を食べ終わって部屋に戻ると。 国際宇宙開発事業団エルゴ協会から 明日の地球帰還用特別便に乗れば、帰りの航空運賃は発生しないので、 よろしければフロントまで連絡くださいというメッセージが タブレット端末に記録されていた。 今回起きた事件や月での非公式な数々の施設、UFOらしき乗り物の存在、 などは私を含めて残りの乗客たちの口も封じておきたいだろうし、 けして世間には公表されたくはないだろう。 地球帰還用の直行便で今日と明日の出来事を忘れさせるような 薬を飲まされるのかもしれないが、 自分自身の身の安全を確保するためには仕方がないのかもしれない。 部屋に戻りパジャマに着替え歯を磨いて寝た。 意識がどんどん遠ざり、 私は深い眠りへと入っていった。 2 気が付くとステーション3にある病院のベットで眼が覚めた。 体全体が奇妙に重く寝がえりはできるが、 ベットから立ち上がれなかった。 どうやら私はいつの間にかここまで運ばれたらしい。 ベットの横には小さなテーブルがあり、 そこに用意されている水をストローで飲んだ。 私がステーション3に運ばれて意識が戻る前に、 トシコが見舞にきてくれたらしく。 今では珍しい手書きの封筒が置いてあった。 体の状態は大丈夫ですか? 国際宇宙食開発事業団エルゴ協会のスパイ活動容疑で あなたはマークされています。気を付けてね。 愛するトシコより。 私が宇宙食開発会社で働いていても、 趣味は超常現象の研究家であることは彼女も知っているのだが、 私が今回この病院に運ばれる以前の、記憶がどうにも思い出せなかった。 主治医の説明によれば、アルキメデス宇宙港着陸の際の事故で頭を強く打ったらしいことは聞かされているが、 事故後地球の病院で意識が戻るまでの出来事には誰も触れようとはしていない。 もしかすると私は月面でエルゴ協会の月面での事業の秘密を見てしまったのかもしれない。 エルゴ協会というのは元々は1975年に設立された 月と地球との間の重力が安定している場所に 宇宙コロニーを建設する目的で設立された。 アポロ計画が終了し、アメリカも経済的には コロニー建設の予算を獲得できなかったようで エルゴ協会でのコロニー建設は40年も遅れた。 2015年になって要約資金調達できたことにより ようやく着工されたが2042年の時点でもまだ65%しか完成していない。 全長142メートルの二重の丸いリングをつなげたような ステーション3よりもはるかに大きい筒型のシリンダー状のコロニーは 入居者を募集してはいるが、一部の世捨て人のような金持ちの老人や宇宙開発に 興味のある科学者の家族以外は、わざわざ不自由極まりない宇宙空間で生活しようとは思わないようで 事実上は新たなる資金調達の目途が立たない限り 開発は中断されているようだ。 タブレットに新たなメールの着信が2件届いていた。 一つは私が会員になっている、SF作家クラブからで、投稿していた 短編小説の「銀河系の外への旅」を加筆して出版しませんか。 という雑誌編集者からのお知らせと、 もうひとつは、トシコからのメールで、 「意識が戻ったら連絡ください。あなたを元気にさせる いい薬があるわよ。私に任せてちょうだい。」 トシコより。 読み終わると若い看護師が体にぴったりとフイットした 白いつなぎの服を着て現れた。 「ご気分はどうですか?お熱をはからせてもらいます。」 と言って脇の下に体温計をはさみ3秒で引き抜いた。 「36度7分・・・何かお持ちしましょうか?」 そうだな・・・ダイエットコーラでも持ってきてもらえないかな」 「かしこまりました。すぐにお持ちします。」 テレビのリモコンのスイッチを入れると、 地球の人口は現在86臆になり地球におけるこのままの状態が 続けば地球人口の三分の1は餓死する危険性が出てきたという ニュースが報道されていた。タブレットに再び着信があった。 「深夜の2時にあなたの所に迎えにいきます。 退院手続きはまだだけど、あなたは影の政府から狙われているわ」 「スペースポートの4番格納庫にエルゴ協会のステルスシップがあるの」 「それに乗ってアルキメデスの事故現場まで行きましょう。」 詳しい話はのちほど。 あなたの着替えは用意してあります。 トシコより。 先ほど注文したダイエットコーラが届いたが、 飲むのは危険だと感じた私は晩御飯にも口を付けずに 深夜の1時45分にアラームを設定してから眠りについた。 体力を温存しておかないといけないと感じたからだった。 セットしていたアラームが鳴り、トシコが現れるのを待った。 きっかり深夜2時にとしこは現れ着替えを済ませると スペースポート4番格納庫に向かった。 何故かトシコが持っているエルゴ協会のIDカードで セキュリティはパスできた。 格納庫には黒い3角形の見たことのない宇宙船が3基並んでいた。 トシコが乗降口の横のセキュリティパネルに右手をかざすと、 一番手前にある小型宇宙船のドアが開き。座席に着くと、 内部は見たこともない未知の計器でおおわれていた。 「早く、警備が来るまで1分もかからないわよ」 「緊急脱出ポットから射出するからベルトを早く締めて!」 魂を置き去りにしたまま体だけが瞬時に移動するような激しい重力加速度で、 思わずおしっこをちびりそうになったかと思うと、あっという間に ステーション3からステルスシップが射出された。 「大丈夫よ、ステーション3には軍事目的の宇宙船は一隻も 存在してないから、追っては来ないわ」 私は黙ったまま頷いた。 やがて窓から見えてきたのは月面ではなくステーション3 と同じく地球の周りを回っている、建設中のコロニーだった。 「さあもうすぐつくわよ。」 「月面じゃなくてごめんなさい。」 「あなたとの通信は影の政府に情報は漏れていたから」 「きっと彼らはアルキメデス付近でこのルナ2が来ると思って 待ちぼうけすることでしょうね。」 「そうだったのか、私はてっきり月へ行くとばかり思っていたよ。」 「味方を欺けないものが敵を欺こうったって無理よ。」 「こつちのコロニーには強い味方がいるのよ。今にわかるわ。」 建設中のコロニーのスペースポートにルナ2は静かに着陸した。 「まずはあなたの体調がまだ万全じゃないから、 私のマンションで2,3日休むといいわ。」 私はとりあえずエルゴ協会本部に事件の詳細を報告してくるから、 部屋の中は自由に使ってもいいわ。」 「セクシーな下着なんて干してないから安心してね」 コロニー内のマンションまで案内されて14階の 部屋まで自由に使えと言い残し、 私を一人部屋に残したまま トシコは立ち去った。 そういえばまだ夜中の3時半だし、 トシコが帰るまでベットで眠りについた。 気が付くと朝になっていた。窓から外を眺めるとコロニー内部の 照明設備は地球と同じ環境にちょうせいされているらしく、トシコと マンションにたどり着くまでは夜間照明だったのに、今はとても明るかった。 眼が覚めるとトシコはキッチンで朝食を作っていた。 「おはよう。よく眠れた?」 トシコはベーコンエッグとトーストとサラダを2人分 テーブルに並べてコップに牛乳を注いで、テーブルに座った。 「早く顔を洗ってね。朝ご飯を食べる時間よ。」 「うん、おはよう。」 「ところでここはトシコさんのマンションですか?」 「ちがうわよ。私がマンション買えるお金なんて、あるわけないじゃん。」  私の両親のだけど、エルゴ協会の社宅みたいなものね。」 地球では影の政府によって20世紀の後半から「宇宙人も、異星人もグレイもレプテリアンもSFの子供騙しってことになってるけど、真相はあなたが知ってる事にほぼ間違いはないんだけど、」 「あなたが知らないとっても重要なことだけは話しておくわ」 「いったい何のことですか?」 「それは、もうあなたは指名手配されてるようなものだから地球に帰還しても空港警備隊に捕まるわよ。」 「国家の安全を脅かす罪でね。」 「そうだったのか、」 「いつのまにか犯罪者にされていたんだな。」 「こうなると私の会社から解雇されるのも時間の問題だし 地球に戻るメリットなんてないようなもんだな。」 幸い地球を離れる事が決まった時点で私物は全部処分しておいたし、 宇宙銀行日本支店に預けていた財産で中古のアメリカの潜水艦を 購入しておいたし、たまに地球に戻るときには 南極のナチスの残党の金持爺さんの孫に迎えにきてもらう約束で 中古の原子力潜水艦を預けてきたけど、これじゃしばらく地球に戻る 気持ちになれないな。」 「急に私に秘密を打ち明ける気になったのは、 こういうことになると予測してたって訳ね?」 「そうじゃないけどさ、宇宙旅行で事故にあって 死ぬ可能性だってあったんだし」 「独身で身よりのない私は元々地球にだって帰る家なんて なかったんだし、おかげでさっぱりしたかな」 「でも、あなた中古の潜水艦に全財産をつぎ込んで いったいどうするつもりだったの」 「あ、それなら私が書いた小説の 「銀河系の外から帰還した男」 に全部かいてあるから暇な時に読んでみて」 「本に書くほど長い理由があったの?」 「まあ、そうかもね。大人の発達障害って病気はしってるかい?」 「ええ、まあ。知恵遅れとは違って、研究者とか、学者とか一つのことに 異常にこだわる習性がある人よね。」 「人との関係が上手く築けない代わりに、自分の得な分野にだけは 著しく発達してる人も多いわよね。」 朝食を食べ終わると、私はタブレットの電源を入れて エルゴ協会のホームページを読んだ。 それによると。 ①エルゴ協会に所属するためにはすでに会員に なってるメンバーの推薦状と、 DNA検査が通れば15歳以上の人間なら 入会は可能です。 ②エルゴ協会の設立目的は地球における 貨幣経済による奴隷制度からの離脱と 宇宙エネルギーの平和利用を目的とする ボランテイァ団体です。 ③すでに会員数は8765万人に達しておりますが 現在の地球人口の1%をまだ超えたばかりです。 ④活動内容は個人の資質により異なりますが、 最初に配属されるのは、コロニー建設事業における 建設資材と食糧の運搬及び、コロニー内での 建設作業の補助が最初の活動内容です。 ⑤原則的にコロニー内での食事は無料ですが、 一日に接種可能なカロリーは一人につき 3000カロリーまでとなっております。 ⑥給与は支給されませんが、地球滅亡の事態には 銀河連邦所属の母船に優先的に乗船できますし、 怪我や病気の際も無料で治療できます。 ⑦会員同士の結婚は認められております。 コロニー内で式を挙げた方にはエルゴ協会認定の 高級マンションに無料で入居できます。 ⑧65歳以上の高齢者の入居の場合は家族の承認と 地球での財産での取り扱いについては地球上での 法律が適用されます。詳しくは別途エルゴ協会 窓口までお問い合わせください。 ⑨その他の詳しい内容につきましても、 詳しいパンフレットを用意しておりますので お手数ですが、インターネットでの会員申し込み フォームにてご記入して頂けると後日郵送されます。 ⑩あなた様のご入会を是非お持ちしております。 ありがとうございました。  国際宇宙開発事業団エルゴ協会。 2042年度版入会案内より。 3 エルゴ協会のホームページを読み終わった後 トシコのタブレットに両親から連絡が入った。 「ねえ、最近連絡がないからどうしてるのか心配になったわよ。」 以前から申請してた地球への帰還問題の 話なんだけどね、エルゴ協会が ステーション3の事業から撤退することに決まったらしくて、 2週間後にはコロニーに転属になるから、 あなたもステーション3から配属されて移されるわよ。」 「ねえ、ちゃんと話を聞いてるの?」 「分かったは考えておくわ。」 顔を洗って朝食を済ませたまではよかったのだが、 この先どうしようかと思っていたら。 部屋のチャイムが鳴った。 現れたのはエルゴ協会のエージェントらしく左胸に L5というマークがついた紺の制服を着た金髪で 背の高い男がドアの外に立っているのがモニターで確認できた。トシコはそれを見てすかさず 玄関まで入れてその男を部屋に入れた。 「こんにちは、初めまして私はエルゴ協会の者ですが、このたび、トシコさんから連絡があり、あなたにどうしても 伝えたい話があったので参りました。それほどお時間はかかりませんがよろしいでしょうか?」 横に立っていたトシコが頷いた。 「わざわざすみません。副司令官が直接ここまで来るとは思いませんでしたわ。」 「副司令官?ってエルゴ協会は軍隊まで保有してたのですか?」 「違うわよ。まずは、立ち話もなんだからソファで皆んな一緒に座っりましょうよ。」 3人で居間のテーブルに腰かけた。 「失礼とは思いましたがあなたのことは全部調べさせて貰いました。」 「まずは、あなたが、きっと長年疑問を抱いていたことについて 説明させていただくと、 私は人類とほぼ外見は同じですが 太陽系の外の惑星から移住してきたものです。」 ここにいるトシコさんの父親もそうですが、 あなた方でいう第二次世界大戦が終結してから、私たちは あなた方を私たちの兄弟として迎え入れようと努力してきましたが、」 「影の政府の妨害によってことごとく真相は公にはできませんでした。」 「一部のUFOマニアといわれる人々の荒唐無稽な話など、 誰も信じませんでしたから」 「そうしてあなたがたの時間でいう21世紀になって、月面での基地の制作や コロニー建設。火星による移住計画は人類の技術ではまだ無理でしたが、」 「我々のサポートにより現段階までこぎ着けました。」 「ですが、こうして人間に近い外見を保っている我々の仲間は 私を含めてごく一部なのです。」 「我々の仲間は宇宙での長期に渡る滞在で姿形は変貌してしまいました。」 「人類に関与したことは我々の祖先の望みでしたが、 あなたがたの影の政府の妨害工作によって 月面のアルキメデス火口付近の宇宙船建造施設の一部は破壊されたのです。 「我々はあなたがたと交戦するつもりはないのですが、 これ以上は月に滞在し続けることは危険だと 判断しました。」 「あなたとトシコさんとの会話は傍受していましたから、 危険なアルキメデス宇宙港周辺地域に近寄る ことの危険性を伝えるつもりできました。」 「どうか我々にこれ以上干渉するのはやめてもらいたいのです。 初対面とはいえ、副司令官といわれる男の話に異議を申し立てる立場などない 民間人の私は、彼の要求を聞き入れるしか選択肢はなかった。 「承知いたしました。」 トシコも頷いた。 「お話はよくわかりましたが、 あなたがたは具体的にはいつ頃ここを離れられるんでしょうか」 そういうと、トシコと副司令官はお互いに眼で合図したかと思うと。 「約2時間後です。」 「2、、、2時間ですか、たったの2時間。」 「そうです。これは私たちがずいぶん以前から決めていたことです。」 「地球の影の政府が攻撃してきたら、我々は戦わずに逃げるのです」 「それは、どうしてですか!」 「あなた方の高度な技術があれば、 人類の影の政府の攻撃を防げるじゃないですか。」 副司令官は首を横に振った。 「この問題に関しては長年の間、人類とは平行線だったから 我々人類は宇宙では野蛮人の域をでないのよ。 「もう話すだけムダなことなのよ。」 「私達にはまだ早すぎたんだと思うわ」 「まだ、野蛮な猿であることを認識できていないのよ。」 トシコはまるで副司令官と同じ考えであるかのように冷たい視線を私に投げかけた。 「短い間だったけど、楽しかったわ。」 トシコと副司令官は椅子から立ち上がると、玄関の方へと移動した。 その時私は、トシコも彼らと一緒に太陽系を離れていく予感がした。 彼女と私は恋人ではなかったし、将来を約束していたわけではないが、 唐突な別れに私は戸惑った。 「両親が2週間以内にここに戻ってくるみたいだから、あなたに そのあいだ部屋の管理は任せるわね。」 「エルゴ協会には推薦状を送っておいたから、後は近くの病院でDNA検査を受けておいたほうがいいわよ。」 その時、月の裏側においては銀河連邦より飛来した葉巻型母船が2隻 と護衛艦12隻が月の裏側に集結していた。 私の想像をはるかに超えた高度な文明を持つ彼らの行動を 無力な民間の目撃者でしかない私は、刻々と迫る 彼らの太陽系脱出劇を見ることすらできないのであった。 「私は玄関で、留守番は私に任せてください。」 「そのかわり2時間後に迫った太陽系を脱出する船を見送りにいってもかまいませんか? 「それならスペースポート2に停泊中の船だから、見ることは可能ですよ。」 と副司令官は言った。 トシコは急な別れを寂しく感じたのか表情はさえなかった。 護衛のガードマンが6人、マンションの入り口で待ち構えていた。 スペースポートまでの距離は歩いても近い距離だったが、 護衛の車2台に挟まれた、真ん中の車に二人は乗り込み、 私は手を振って見送った。車が走り出した後に、 私は彼女を愛していたことに気づき、 スペースポートまで夢中になって走った。 シリンダー状に伸びている構造のこのコロニー内で、 私は一直線に走り続けた。 彼女に別れの言葉を口にするぐらいなら、 このままマンションに戻りたい気持ちもあったが、 太陽系の外から飛来した船を この先2度と見れないような気がした私は、 スペースポート2の文字がはっきり見える場所までたどり着いた。 普段はきっと立ち入り禁止なのではと思われる区域に、 多くの人々が噂を聞いてこの巨大な船が旅立つを 見届けようとしているように見えた。 スペースポートの向い側に並ぶビルの屋上に たくさんの人々が集まっている。 エレベーターは混雑しているようだったので、 非常階段で屋上まであがった。 まるで巨大タンカーの2倍以上はあるのではないかと 思えるぐらいの船だった。 この葉巻型の宇宙船は以前にも目撃したことがあるように思えた。 そばで見ると足が震えるほどの感動をもたらした。 「私もこの船に乗りたい!」 副司令官のあの人間とは思えない未知のオーラに圧倒されて、 何も言えなかったが、トシコも乗ってるあの船に乗りたいという 衝動が湧き起った。」 「いったいどうすれば・・・・そうだ、トシコのタブレットに連絡だ!」 「タブレットの電源を入れトシコに最後の通信を試みたが、つながらない。 きっと電波が遮断されているのだろう。」 「ううう、なんてこった。」 「こうなったら下に降りて貨物室からでも、排気口からでも、 はってでも乗り込みたい。非常階段から降りて一階にたどり着き。 宇宙船の貨物室と思われる2か所のハッチが 開いていて最後の積み込みを終えようとしていた。 警備員の監視の隙間をみて入ろうとしたが阻止された。 もう時計を見るとあれから1時間は過ぎているだろう、 残された時間はもうわずかだった。制服を着た関係者なら 運搬の為に乗り込めるのだろうが、私には無理だと思った。 制服、制服、何処かで制服は手に入らないのか、そうだ! トシコの父親はあのマンションの持ち主だから、クローゼットにエルゴ協会の制服があるかもしれない。 見たところ警備員はエルゴ協会の制服にはノーマークのようだ。車でマンションまで行けば何とか間に合うだろう。 スペースポートの駐車場で鍵が付いたままの車を盗んでマンションまで戻ると、 急いでトシコの家の中のクローゼットを に父親の制服がないかどうか探した。 「あった。」 「まさかと思ったがエルゴ協会の制服があったのだ!」 少しサイズが合わなかったが、充分にこれで行けると思った。 急いでエレベーターから降りる。 車に乗り込みスペースポートの駐車場までたどり着いた。 車から降りた時。どよめきのような悲鳴のような音が響き渡っていた。 ま、まさか! 奇声を上げる人々をかき分けながら前に進んだ。 でも目の前にある巨大な黒い船はもう動きだしていたのだ! 「も、もう、だめ、」 「もうだめ、もうだめ、もう・・・・・」 動き出した船を見送る人々のなかで、 私は後悔という言葉の悲しさで、泣くこともできず。 声も出せずにたたずんだ。 やがて見送る人々も徐々に立ち去り。警備員に注意されて起き上がった私は、 マンションまで歩いた。前を見ているようでも、前を見ず。 音が聞こえてるようで聞こえていなかった。 その時タブレットの端末に着信があり、 点滅していることにすら気づいてなかった。 気が付くとトシコのマンションの前まで戻っていた。 14階の部屋に辿りつき。鍵を開けると電気がついたままだった。 さっき、あわててたから電気を切り忘れていたのだ。 靴を脱ごうとしたら。トシコが履いていた靴が横にあった。 部屋に入るとテーブルにトシコが座っていた。 「おかえり!遅かったわね。」 タブレットに電話しても出ないから、私がいなくなった ショックで何処かに置き忘れてるんだと思ってたわよ。」 「私ね、地球には未練がないんだけどね、 宇宙人の男と将来一緒になるつもりはなかったの。」 「それでね、副司令官にごめんなさい!あなたとは一緒に行けない。と言って船から降りたの。」  「あなたと付き合いだしてもうかれこれ2年になるけど 私はエルゴ協会には詳しいけど、あなたは影の政府に詳しいけど、 どうして今まで暗殺されることもなく平穏でいられたのかしらね?」 「それは、きっと名前が知られてないからだと思う。」 誰も私の本名なんて知らないし興味ないだろうしさ」 トーマス・ヨハンソンと名乗ったりケン・ソゴールだったり、 日本人なのに外人の名前で本を書いていたからかもしれません。 無名であることは時して有利に作用するのかもね」 UFOに興味がわいたのは小学校5年生ぐらいで、エイリアンによるアブダクションを作文に書いて教師に叱られ。 「もっとまじめに現実的な事を書きなさいと言われた。」 私は小学校に入る前に北海道に住んでいたんです。 その頃はUFOなんて言葉も知らなくてね。 裏の畑が夜中にオレンジ色に光っているので、夜中に起きて サンダル履いて身に行ったら同じぐらいの 背丈の眼の大きい灰色の生き物が目の前に現れて怖くて逃げたんだけど、 足が遅くてとうとう逃げきれずに捕まった。 その体験は強烈に記憶してて小学校低学年の同級生の名前は全部忘れてるのに、 その奇妙な生き物を見たことが忘れられなくて、今でも鮮明に覚えてるんだ。 それで小学校の5年生ぐらいの時にテレビでUFO特番を観て 怖くて怖くて震え上がったんだよ。 だってテレビで放映された外国でのアブダクション体験って、フィクションではなくて私の子供の頃の体験とほとんど変わらないので、それ以来宇宙人もUFOも 私にとってはリアルな現実としか思えなかったんだよ。」 「私は、両親から聞かされたり、人間とそっくりな異星人は何人もみたけど、グレイタイプ?ってのは嘘だと思ってたけど、 やっぱり本当にいたんだね。」「信じたくない気持ちはわかりますけど、これだけたくさん世界中で目撃されていれば隠せないでしょうね。」 人類がこの地球を離れて宇宙へと進出したように。 太陽系の外の一千億以上の星々の中には、 地球が誕生する以前に文明を築い星もあっただろう。 我々が近い将来に太陽系を自ら製造した宇宙船で 地球を離れることになっても今の人類の寿命はあまりにも短すぎる。 太陽系を離れたとしてもおそらく片道キップの旅になるだろう。 「君は女性だから、そんな無謀な掛けには挑戦してほしくないが、 私にはこの地球を出て遠い銀河の果てまで行きたいという気持ちはある。」 アルキメデス火口付近の地下で製造されていた船のテクノロジーというのは 影の政府が欲しがっていた技術だろう。おそらく3次元と四次元の狭間を 通る半物質素材や、光粒子エンジンによる瞬間移動に3次元の地球生まれの進化した毛のない猿だった人類は発狂してしまうかもしれない、」 だから、太陽系の外から来た旅人は人類の進化はまだ時間がかかると思って 諦めたのではないだろうか」 「わたしもだんだんあなたに影響されて、創造主の神様のお考えが推測できるようになってきたのかしらね。」 近い将来には太陽系を離れた人類は想像も付かないくらいの数の星々を目撃することだろう。星々の彼方へ人類が到達するころには現在の人類の寿命も10倍20倍に 長生きできることだろう。星々の彼方へ飛び出した人類はもう宇宙の孤児ではない。母なる地球の大地にしがみついている内は、宇宙の孤独に耐えきれなくなっても 帰る家である地球があった。だが未来の人類はこの狭い地球で幼年期のゆりかごから離れて宇宙知的生命体として旅立たねばならない。 何故なら地球とて、永遠に存在し続ける星ではないのだから、地球の星としての寿命が尽きぬ内に未来の人類は故郷の地球を捨て去るだろう。 そんな日が訪れる頃。我々は今とは似ても似つかない宇宙生物に進化していることだろう。だが、同じ人類同士でも、肌の色が違うとか 宗教が違うという理由でお互いを殺し合っている段階では到底宇宙へ旅立っても 他の星の住人と仲良くやっていけるのだろうか・・・・・ 地球では影の組織やイルミナティに対して立ち向かえる勢力は見当たらなかった。 月面における権力争いもどうやら 地球側が勝利して古株の異星人が逃亡したことで決着がついたとは思えない。 浅はかな人類は宇宙に存在する見えないエネルギー見えない生命体の4次元からの 影響を頭にいれてないではないか、彼らとは戦争にすらならない。形のない意思、形のない文明、形のない生命体が宇宙空間を取り巻いているのであれば、勝ち負けではなく。 影の政府もイルミナティも彼らを恐れるであろう。 何故なら彼らは我々の正体を知っているが、我々は彼らの正体を知らないからだ。 4 月面にある放送局のルナテレビから衛星放送で、アルキメデス宇宙港周辺の様子か 臨時ニュースで流れていた。月面に基地を持っている異星人は 少なくても10種類は存在し、地球から攻撃を仕掛けてきた戦闘機を相手に とうとう武力で戦い始めたのだった。恐らくこの放送は地球では放映されないだろうが、 ルナテレビジョンも命がけの放送に踏み切ったようだ。今後は観光目的では月には近づけない事態になったようだが、 この情報も地球に漏れるのは時間の問題だろう。ついに20世紀後半から懸念されていた。 アルキメデス宇宙港周辺地域での戦闘がついに始まった。人類が月面に一歩を踏み出した時点でいずれは こうなったであろうと、予測されていたと、テレビ放映に招かれた軍事評論家は語っていた。 その隣にゲストで出演していたSF作家のロバート・D・クロックは、人類が勝つと取り返しの付かない事態に 発展すると言っていた。戦争を仕掛けたのがどちらだったにせよ、月面での戦争行為は宇宙空間で他の種族たちにとっても 迷惑この上ない行為だから、この先人類の宇宙進出の際に人類自らが野蛮な好戦的種族という 宣伝をしているようなものだ、未来を視野に入れず宇宙で喧嘩をして この先の宇宙での遭遇が上手く行くわけがないだろうに。 人類がこの地球で爆発的人口を増やす以前の時代は地球の支配者は海から這い上がった恐竜だった。 巨大生物として猛威を振るった。だが彼らは寒さには弱かった。 地球の氷河期が果たして自然現象で起きたのか何者かの意図によって 絶滅されたのかはもう過去のことだからどうすることもできないが、 寒冷期の過酷な事態になっても洞穴に隠れて絶滅を免れた恐竜は2足歩行することができた。 人類が猿から人類に進化する時点で、二足歩行することにより両手を使えるようになったように、 彼らもまた人類が類人猿であった頃よりも先に文明を築いた。彼らの文明は宇宙からの来訪者を文明が発達する初期の段階から 受け入れたことにより宇宙文明との交流によって進化したが、元をたどれば爬虫類から進化した脳は 猿から進化した人類より獰猛で狡猾で残虐であった。 爬虫類の脳の土台の上に高度な文明、武器を備えた末路はやはり戦争による絶滅かそれに近い立場まで 絶対的な保有数を激減させた。あからさまに宇宙の星々を侵略し彼ら恐竜から進化した レプテリアンは数々の戦争で、宇宙へ飛び出した僅かな数しかいきのこれなかったのである。 イルミナティを率いる影の組織ルナシャドウとレプテリアンの指導者レッドは アルキメデス宇宙港とその周辺地域を占領した。アメリカ・ロシア・ナトウ・中国も含む多国籍軍は 今回のテロ行為を非難したが、月面での武力行使を阻止できるほどの宇宙艦隊を保持していない 地球連邦はなすすべもなかった。このままでは、宇宙ステーション1・2・3と 建設中のコロニーも安全とは言えなくなった。その頃月の裏側に集結していた銀河連邦所属の宇宙船は地球人達の争いには関与せず。 同時に銀河連邦司令官ラー・ソルは太陽系離脱のための準備を整えていた。 コロニーから船出した副司令官カール・セロンの船も月の裏側に到着した。 こうして人類が月の所有権や月面の鉱石の採掘による フリーエネルギーの開発には彼らは手を差しのべることを諦めた。 野蛮な人類に高度な技術を与えることの危険性を彼らは知っているのだ、 そして我々がその好戦的な行為を辞めない限りお互いにいがみ合い 絶滅するであろうと考えているようだ。アルキメデス周辺地域による騒動も収まり。 国連との和平交渉も秘密裏に進行し、2週間ほどの月日が流れた。 コロニーの病院でDNA検査を行い。私はエルゴ協会に入った。 地球では犯罪者として指名手配されてるはずの、私は、幼い日から名前や住所を変えながら生きてきた。 今回、エルゴ協会に申請した 名前はトーマス・ヨハンソン もちろん本当の名前はあるのだが、職務上の秘密で誰にも知られてはいない。 コロニーのスペースポートに置き去りにされたままの小型宇宙船ルナ2に乗って月の裏側のクリスタルタワー周辺地域の発掘作業が初めての仕事になった。 どうやら月面でのエルゴ協会は人材不足なのか、私のような新人でもすぐに採用された。 ルナ2で月の裏側のクリスタルタワー周辺地域の発掘上付近の飛行場までトシコに送ってもらった。 エルゴ協会の身分証を見せた後、採掘の責任者から 宇宙服の取り扱い方と現場での簡単な作業の説明を受ける ミーティングに参加した。 「高さ4・32キロの巨大なこの建造物は今から地質調査の結果今から、 600万年ほど前に地球外知的生命体により建造されたと思われる。」 「建造目的は未だに不明だが、周辺地域の土壌には無数に金属物が存在している。 その金属物を回収して、このクリスタルタワーを建造した 目的とそれにかかわった文明を調査するのが我々の任務である。」 トシコのマンションに居候していた私の前にご両親が帰ってきた。 「おかえりなさい。パパもママも元気そうね。」 「やぁ、あれから随分と大変な目にあったよ。でもステーション3が 無事でコロニーに戻ってこれて本当に良かったと思っている。」 「ママもおかえり。」 「なぁに、私に一言も言わずに恋人と、ここで暮らしてたのね。」 「恋人ではありませんよ。私は娘さんに対して恋心なんて抱いては いませんから・・・」 「私は永遠の愛なんて信じてはいません」 「人はいつしか交際相手に嫌気を感じたりするものです。」 「結婚前の若い男女はお互いに気持ちが盛り上がっているから 一緒になるのであって、それも月日が流れたらお互いの気持ちも 徐々に冷めていくのはしょうがないとは思いますが・・・」 私の否定的な男女感情はその場の空気を冷めさせてしまったようだ。 トシコとその両親の前で気まずくなった私はマンションを後にして 採掘場の施設行きのシャトルに乗った。 採掘場の施設に行き、明日の予定を聞いてから部屋に戻り 一人で晩御飯を食べビールを飲んで寝た。 ベットから天井のシミを眺めながら自分自身の未来を想像してみた。 十年後二十年後には孤独な一人暮らしの老人になる自分の運命を 悲しいとも思わないし、見せかけだけの仲のいい夫婦を見ても けしてうらやましくはないのだが、自分が死を迎えた時に、 誰も悲しむ人がいないのではないのかと思うと少し,淋しさを感じた。 人類が太陽系や銀河系を飛び出したとしても、きっと地球環境によく似た星を 探すことだろう。そして地球での文明を真似た社会を作り出すに違いない。 そしてまた人口が増えるにつれ考え方の相違からもめ事を起こし、 戦争を繰り返すのだろうか・・・・ やがて私は眠りついた。 朝になって眼が覚めるとタブレットの端末に 映像によるメッセージが保存されていた。 それはエルゴ協会採掘基地からの緊急ニュースだった。 レプタリアンからの攻撃を受けて採掘場周辺地域は戦場になる可能性が大きいので至急避難せよとのことらしい。 月面での仕事は中途半端な状態で地球への一時帰還命令が下された。 私はトシコのスペースシップに乗り込み大気圏を通過し南極の秘密基地へと向かった。 5 南極にある旧ナチスの秘密基地は現在では軍事目的では 運営されていない。そこにはヒトラーの孫たちとその家族 や、友人たちが自給自足の暮らしをしていた。 気候は思っていたよりもかなり温かく、ヌーディスト・ビーチまであるのだ。 地上の楽園のような施設を作りたかったのだろう。 ヌーディストクラブで知り合った14歳のエイミーが語るところによると 南極基地の住民の9割が地球へ移住してきた太陽系の外の惑星から訪れた人々だという。 性的にはオープンな彼らは裸を人に見られても恥ずかしくないようだった。 彼女らもコロニーで出会った銀河連邦司令官ラー・ソルと同じように地球での地質調査を 終えて地球を旅立つことを計画していた。 彼女は故郷の星に帰還するための保存食を船内のキッチンで作っていた。 宇宙時代になろうとも船内で食べる食糧の備蓄が充分になければ 生きてはいけないからだ。 一週間後に、ついに地球を離れることになり、 トシコも含めた女性だらけのメンバーに男一匹乗り込み、 エイミーの生まれ故郷である「喋る猫がいる。」という星へと向かった。 太陽系の外に出ていった人類で、 地球に戻ってきた者はごくわずかだという。 遠い宇宙を航海するには人間の寿命は短すぎる。 エイミーの星にたどりつき、楽園のような生活をしばらく楽しんだが、 地球時間ではどれほどの歳月が流れたのだろう。トシコは私の子供を産み。エイミーは大人の女性に成長した。惑星エデンの素晴らしい文化を地球に伝えれば、 戦争や争い事もなくなるかもしれないが、この星の存在を悪いものたちに知らせるとこの星を支配しようとするものも現れるだろう。 あれから約10年の歳月が過ぎたが今の地球はいったいどうなっているのだろうか、古代の預言者の言葉どうりだとすれば、 恐らく自滅の道を進んでいるのだろうか………… 銀河のなかの一千億もあろうかと思われる星の中で生命があると思われる星を探し出す仕事についた私は惑星エデンから20光年先行き存在するブラックホールを見つけた。 ここを通過すれば銀河の外の宇宙に行くことが可能だが、それは片道切符であり。そこを通過すればもう二度と今の星に帰還はできない。自殺に等しい行為だが、 過去に何人も銀河の外の宇宙へと旅立った男たちがいたことが記録に残されていた。 「人生は、いつの時代だろうと片道切符なのさ、どうせいつか死ぬ命であるなら見たことのないもの、 触れたことのない物を体験したい。」 という言葉を残し彼らは旅立った。 家族に別れを告げ、私も船内のコンピュータにナビゲーションされながらただ一人で銀河の外へと出ようとしていた。 銀河の外に旅立つ前に健康診断を受けたところ、身体的にはメタボリックな傾向はあるがさほど問題はなかったが、 心理面では性的欲求不満であると診断された。医者の診断には間違いないと思った。しばらく誰ともセックスしてなかったからだ。 トシコにその話をしたところで、帰ってくる返事は予測できたので、エイミーに相談してみた。24歳の大人の女性に成長したエイミーは子供の頃よりも陽気になり、 私の悩みを打ち明けると、 「したくなったらいつでもいいよ。」と言ってくれたので、もういつ死んでもいいという覚悟だけはできていた。 惑星エデンの光速宇宙船に乗り込んだ私は、宇宙に点在する ワームホールをジャンプし、 2千7百光年の距離を移動し銀河の果てまでやってきた。 恐らくこのワームホールを通過すればそこは銀河の外だろう。3次元と4次元の狭間には数多くの星からここを通過した船が止まっているように見えた。 3次元空間における私の体はそこを通過するには弱すぎたのだ、 1分もかからないうちに私は気を失った。 時間が過去から未来に向けて一定に流れているという脳の錯覚から開放された私は 時のない世界で意識を取り戻した。 銀河の外の世界には星がひとつも見えない。 でもこの暗闇の中でかすかに見える世界があった。 残りわずかな空気と食糧しかないこの状況で自分の死を予感した。 宇宙を創造した神がいるとすれば、 自分一人の生死など何も役に立たないであろう。銀河の外で見えたものの実態がわずかに確認できた。 それは自分の乗り物の数千倍、数万倍もありそうな灰色の柱のようなものが暗黒の宇宙に浮かんでいた。 その物体の回りには金色の光にを放つオーラのようなものに覆われているように見える。とりあえずそこが私の到達できる終着駅に思えた。 それ以外の選択肢は何処にもない。 その灰色の柱に近付くにつれて、 この世に生命として誕生した瞬間から、49歳の今にいたるまでの記憶が わずかな時間のなかで高速でフラッシュバックした。 私の人生の終着駅はここだったのだ。 6 私はついにここまでやってきた。 この灰色の柱のようなものが何の目的で そこにあるのかは考えてもしかたがなかったが、私は宇宙服を着て船の外へ出てそれに触れてみたかった。 残りの酸素はまだ1時間ほど残っていた。柱の上に座り込み、 トシコやエイミーに会いたいと思っている自分がそこにいた。 巨大過ぎる灰色の柱を動画として記録した私に次なる目標が生まれた。 惑星エデンに戻り家族とエイミーを愛するのだ。帰る方角はどっちだったかは分からなくなってしまったけど、きっと神様が指し示してくれるだろう。エルゴ協会本部に向けて最後の通信を送った。 「銀河の果てには灰色の巨大な円筒形の柱がある。大きさは測定不能だがこの先無限に伸びているような物体である。おそらく宇宙の大きさに比べたら我々人類は極小なウイルスか細菌でしかないのかもしれない。」 「我々の脳が思考できる物体の域をはるかに超えた超巨大な聖域に足を踏み入れたとしても、人類の寿命はあまりにも短い これから先の探検は次の世代の目標となるだろう。 見渡す限り星はひとつも見えないが周囲は段々と明るさが見えてきた。 この光は何処からくるのだろう・・・・。」 酸素が残り5%になり私の意識は私の体を離れてこの灰色の物体の上を飛び続けた。 暗黒の宇宙に貫かれたこの巨大な柱に終わりがあるとも思えないが、私の意識はそこを通過し、かすかな光を求めていた。 何処からともなく声が聞こえたような気がした。 「あなたはまだこの先には来てはいけない。」 「あなたが自分の使命を果たした後に、 またここにくるがよい。」 私の脳裏にもうひとつの人格があるようにさえ聞こえた。 先ほどまで見えていたかすかな光は消え失せ、魂が行き場を失ったように私はその先へ行くことを断念した。 気が付くと私の肉体から魂だけが暗黒の銀河で迷子になった。 宇宙を創造した神々の糸は計り知れないが、 私にはもう帰る為の自分の肉体の場所すら探せなかった。 あれから、どれほどの時間が経過したしたことだろう。 おそらく私の体は酸素切れで息耐えて、 宇宙空間を漂う死体になっただろう。 人類が到達できた銀河の最深部まできてSOSを出したところで 私はもう3次元の生物ではなく、魂だけが多次元宇宙に迷い込んでしまったようだ。 そしてそれが私が体験できた銀河の果てでの出来事だった。 今からそう遠くない未来において誰かがここまで来れたなら、 私はその体に乗り移ることができるだろう。 その機会が訪れる日まで 長い眠りにつくことにしよう・・・・    星々の彼方への旅  THE END
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