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ピンポーン、と秀がインターフォンを鳴らし、だいぶ間を空けてから扉が開いた。
「んだよ、秀。何の用?」
「例のモン出来たんだろ? 寄越せ」
かったるそうに扉を開けた誉と目が合う。
「律希……なんで秀といるの?」
どこか不機嫌そうな誉の視線が、秀に繋がれている手に向けられていた。
気まずくなり律希は秀の手を振り払って二人に背を向ける。
「んじゃ俺は帰るから……」
「待って、律希!」
踵を返した瞬間、数歩も行かない内に後ろから飛びつかれてつんのめった。
ウェイト差を考えろ、と口を開きかけたところで、先に誉が言った。
「律希ごめん。お願い、帰らないで。俺が悪かった。本当にごめん」
抱きしめられている腕に力が籠る。
「誉」
「人外じゃなくて今度はちゃんとした人間にマワさ……「そうじゃねーよ! このバカ!!」……」
「え、違うの!?」
斜め上すぎた回答にイラッとした。
誉の目が大きくなり、数回瞬きしている。
——ダメだ。こいつ本物のバカだった。
まさかここまで話が通じていないとは思わなくて、頭が痛くなってくる。
——言ったよな、俺? 勝手に実名出演させんなって!?
「人の話聞いてたか!?」
「え、人外が嫌だったんじゃないの?」
「違う!!」
どこまでも残念な思考回路を持つ親友の頭を叩いた。
「秀、俺帰るからこのバカどうにかして……って、居ねえんかよ!」
どんだけ自由人なんだよコイツら。
ちょっと目を離した隙に忽然と姿を消した秀に憤慨していると、何事も無かったかのような顔で秀が玄関先に戻ってきた。
その手には誉と揉める原因になった同人誌が握られている。
「秀……それ……」
「ああ、お前の輪姦シリーズ本だ。お前エロいからな」
「それ俺じゃねーからな!? 本物の俺を無視しないでくれる? 俺はエロくもなければ性癖も何もかもがノーマルですからっ! つーか、秀も読者だったんかよ」
吠えた律希を無視して、秀は誉に視線を向けた。
「誉、今度はNTRもんにしろっつったろ。それに触手描くならイカの人魚にしろよな。普通のやつとか二番煎じもいいとこだろが。イカだったら俺が律希ぶち犯してる気になるから良い。触手と一緒に腹ん中めちゃくちゃかき回してぇ」
——やっべ、バカ2号がいた。
「それ千五百円ね。まあ、確かにイカなら俺らと変わらないから楽しめそう。どうせならNTRからのそのまま3Pとかは?」
——いや、意味わかんねえー。つーか、お前らそんなに仲良かったか? 何で今まで喧嘩してた? 超仲良しじゃねえかよ。
「3Pならそれもそれで良いけどな。律希を彼氏から寝取る系にしろ」
「何で彼氏なんだよ。それに全然良くねえよ! 俺が普通に女の子好きなのお前ら知ってんだろ!」
「律希ちょっと黙ってて。はぁー……。寝取るとか相変わらずクズ思考だよね」
「律希寝取られてんの見て興奮してる奴に言われたくねえわ。つうかよ、お前と律希がリアルに付き合えば全てが丸く収まるんじゃねえ? 俺がそれを寝取る。お前はそれを見てればいいだろ?」
「秀……お前って天才!? 初めてお前が兄で良かったと思ったよ」
——言葉が通じない人らとはどう接したらいいの?
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